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2007年4月29日 (日)

本「物語の役割」☆物語の力

物語の役割 物語の役割

著者:小川 洋子
販売元:筑摩書房
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前にも「ミーナの行進」でご紹介しましたが、小川洋子さんはコニコの最近のお気に入りの作家です。今日紹介する本は、彼女が2月に出した本で、「小説を書いている間に少しずつ心にたまっていった思い」を綴ったものです。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト
I Thought My Father Was God: And Other True Tales from Npr's National Story Project I Thought My Father Was God: And Other True Tales from Npr's National Story Project

販売元:Picador USA
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(「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」の原書)

第1章の中で『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』という項がありました。これはアメリカの作家、ポール・オースターの呼びかけによって、素人のアメリカ人が書き綴ったノンフィクション短編集のことです。小川洋子さんは、この本のことをこういっています。

送られてきた物語は、アメリカ人一人一人のプライベートな世界、閉じた世界のお話でありながら、それらをたくさん集めて読み通してみると、そこに逃れがたいアメリカの歴史の爪痕が見られる。社会の有り様が浮かび上がってくる。見ず知らずのもの同士の物語を集めたのに、それがアメリカという社会、アメリカの歴史全体を形作っていく博物館のような役割を果たしている。結果的にそうなったわけです。(p38)

私も、この短編集の原書も翻訳も、そしてポール・オースター自身が朗読したものも読んだり聴いたりしましたが、とても味わいのあるお話ばかりです。「博士の愛した数式」に出てくる「友愛数」をキーワードにしたストーリーもあって、実話ならではの肌触りが伝わってきました。

それから、「作家は小説の後ろを追いかけている」という項では、フランス人作家フィリップ・ソレルスの「小説と極限の実験」という講演の言葉を引用して、こう語っています。

「書くこと、文章に姿をあらわさせること、それは特権的な知識を並べることではない。それは人皆が知っていながら、誰ひとり言えずにいることを発見しようとする試みだ」まさにその通りです。…作家も現実のなかにすでにあるけれども、言葉にされないために気づかれないでいる物語を見つけ出し、鉱石を掘り起こすようにスコップで一所懸命掘り出して、それに言葉を与えるのです。自分が考えついたわけではなく、実はすでにそこにあったのだ、というような謙虚な気持ちになったとき、本物の小説が書けるのではないかという気がしています。(p50)

”掘り起こす”という感覚は、作家だけでなく、科学者、彫刻家や絵描きからも言われることではないでしょうか。すでにあるものに気づき、その人なりの努力で掘り出していく作業が作品となったり研究の成果となったりして、私たちの元に届けらるのでしょう。

第3章の「子どもが自我に目覚める時」や「あいまいさの中にある真実」、「本で共通の思いを分かち合う」を読むと、物語の力によって、自分の中にある未知なる世界も、自分を取り囲む広い世界もつながっていると実感できます。   

もっともっと引用したいステキな言葉がたくさんあるのですが、お気に入りのお店をあまり人気が出ないように自分だけの隠れ家にしたいような気がしてきました。じっと読まれることを待っている言葉たちを、どうぞ自分の心でたずねて行ってみて下さい。

さりげない励ましや暖かさがうれしい、春の本です。連休中のぽっかり空いた時間にはぴったりです。

今日の言葉

Chosen as the most popular book in Japan by readers and booksellers alike, The Gift of Numbers is Yoko Ogawa’s first novel to be published in English, and in the U.S.―from Amazon Book Description

(日本で読者と本屋さんの両方から一番人気がある本に選ばれた「博士の愛した数式」The Gift of Numbersは、小川洋子による、英語で出版されるアメリカでの最初の小説です。―アマゾンの本の紹介から)

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