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2007年5月21日 (月)

矛盾は力、断絶は成長そして…

先日、生まれて初めて慶応義塾大学に行ってみました。日本英文学会が面白そうなシンポジウムをやるということを友人から聞いてこれは行かねばと思い・・・

方向音痴な私ですが、地図を片手に人に尋ねまくり、ようやくかの地に着きました。(振り返れば、大通りの迷いようのない道、なぜか複雑に考えてしまうコニコでした)

シンポジウムのお題は

アメリカ文化と反復強迫 アメリカ文学の中に書き込まれた(原)光景 

アメリカン・ナルシス―メルヴィルからミルハウザーまで パネリスト:早稲田大学准教授 都甲幸治

慶應義塾大学専任講師 大和田俊之

東京大学教授 柴田元幸

神戸女学院大学教授 内田樹

若手2人の都甲先生と大和田先生がアメリカの反復される風景として、Don DeLilloMelvilleを取り上げていました。実は両作家の作品を読んでいない私としては、「アンダーワールド」や新訳「白鯨」を読んでみようかななどと思いながらも、この時点で、かなりの専門さに圧倒。うーん、むずかしい。

そして、ここからが今回の目玉、柴田先生と内田先生の発表。お二人ともクローン人間がいるのでは?と思わせるような精力的なご活躍。今回もどんな面白い話を聴かせていただけるかワクワク。

さすがお二人ともパワフルで要点を突いた語りは一気に聴衆を惹きつけていました。特に初めてお会いできた内田先生は思っていた通りのダンディーなお方でした。

アメリカ文学の専門でない内田先生が参加されることで、逆にアメリカ像がより浮き彫りになった感があり、議論はとても刺激的な展開になりました。

アメリカは、歴史的にケネディ暗殺やベトナム戦争、9.11のように、むりやり「それ以前」と「それ以後」という断絶を取り込むことによって複数の価値観を成り立たせているということ。いい意味でも悪い意味でもそれで国を活性化させてきたという趣旨のことを両先生がいわれたのが印象に残ります。誤解を恐れずいえば、アメリカが断絶や矛盾(理想と現実のギャップ)を求めてそれを成長のエネルギーにしていったということです。アメリカは国の成り立ちからして、大きな矛盾をはらんでいましたから。

今までのアメリカの繁栄が断絶の反復からきているとしたら、しばらくして9.11の次なるものが来る気がして、さらなる成長はあるのだろうかと思ってしまうのですが・・・

その流れの中で、柴田先生がユダヤ系をのぞいて、アメリカ小説のアメリカ人がほとんど反省や学習することなく、だいたいが破滅に向かっているとし、内田先生がその破滅を実はユダヤ人が実社会で止めていると受けていたのも、面白かったです。

そこからユダヤ人の作家の作風の議論になり、たて系列を重んじる父子話が主流ということが話されました。都甲先生から「では、父を少しずらした叔父さん(伯父さん)はどうか」という疑問がでてきて・・・

この「おじさん論」は、結構ふくらませる話題のような気がしますね。今の世の中を見回して、寅さんのようにおせっかいで変なおじさん、父親とは価値観の違うおじさんが少なくなっていて、世代間が非常に窮屈になっているような気がします。

そのうちきっと4人のパネリストの方のどなたかが、「おじさん論」を書いてくれるのを期待してます。

お話が白熱するにつれて、若手2人の先生が、柴田先生と内田先生の胸を借りて鍛えてもらっている感があり、聴衆としてはともに学べて、かつ、ベテラン先生方が若手の「父親」役と「おじさん」役の2役を演じているようでもありちょっぴりおかしかったです。

会場からの「ゴシック小説」の質問に、内田先生はアメリカ映画を引用され、「ホラー映画やアメリカが攻められたり、滅びたりする映画の多さは、アメリカの戦争が常にアメリカ国土の外で行われているやましさからきている。そのやましさを映画の中で繰り返し量産することで精神を保っている」と言うようなことをおっしゃっていたのも、的を得ていると思いました。

私の知ってる限りでは、映画の中で自由の女神は2度もひどい目にあい、―「猿の惑星」「デイ・アフター・トゥモロー」―ホワイトハウスはこっぱ微塵になっています―「インディペンデンス・デイ」

これもアメリカの繰り返される原風景かもしれません。

いろいろ示唆に富むシンポジウムでした。最後に内田先生のご本「下流志向」にサインをしていただいて大満足のわたしでした。(可愛い猫の絵つき)

パネリストの先生方ありがとうございました。

今日の言葉

  • experience the American dream
    アメリカンドリームを手にする[実現{じつげん}する]
  • live the American dream
    アメリカンドリームを実現{じつげん}する
  • realize the American dream
    アメリカンドリームを実現する、アメリカの夢を満たす
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    コメント

    コニコさんのUP待ってました。さすがわかりやすく上手にまとめてくださる!一昨日キャンパス内で別れてから無事に駅までたどり着けましたか?(笑)
    さて、私も「おじさん論」「おばさん論」にアンテナがたちました。今日はディカプリオの「マイルーム」をDVDで観たのですが、”移動しない”価値観の違う「おばさん」(ダイアン・キートン)が登場してました。
    あとは柴田先生の「常に2番目の立ち位置」という話ももっと聞いていたかったな。この辺の話も私もまたブログに書いてみようと思います。
    コニコさんもダンディー内田ブログにTBしましょ~。

    投稿: クーネルシネマ | 2007年5月23日 (水) 00時04分

     ディカプリオさまの映画ですか。観てみようかしら。私も「おじさん論」は映画でずいぶん語れるんじゃないかなって思ってます。この前観た「リトル・ミス・サンシャイン」にもユニークなおじさんが出てきて、それについても、このシンポジウムとリンクするような展開になって一人、納得したりしました。
     
     柴田先生の「常に2番の立ち位置」は私にも投影できることで、面白かったです。私が柴田先生との最初の遭遇になった記念すべき本が「佐藤君と柴田君」です。薄くて面白いからすぐ読めます。オススメ。佐藤先生もメチャメチャ面白いのですが、なぜかこの本を読んで柴田先生に惹かれました。弟や妹でいる心地良さとある種のコンプレックスがないまぜでしょうか?どうでしょうか・・・

     因みに柴田先生は今年53歳になられるようです。内田先生は57歳に。やっぱり内田先生は柴田先生のお兄さん年齢でした。

    投稿: コニコ | 2007年5月23日 (水) 10時02分

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