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2008年1月18日 (金)

秘事

秘事・半所有者 (新潮文庫)

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今日は「夫に読んでもらいたい本」のリストから1冊を取り上げます。

「秘事」(河野 多恵子著、新潮社文庫)は2000年の作品でコニコの推薦です。

芥川賞の受賞でにぎわう今週の出版業界ですが、今回の「秘事」の著者も芥川賞には非常に縁の深い方です。1963年に『蟹』で芥川賞を受賞し、1987年より大庭みな子と共に女性初の芥川賞選考委員となり、2006年まで長きにわたり務められた方です。

この本に興味を持ったのは「文学問答」という本の中でこの作品を山田詠美がベタぼめしていたからです。

一読して、しばし・・・この淡々とした抑えられた文は何なのでしょう。飾りの少ない静かさで、まるで波乱万丈など関わりを持たぬというような意志さえ感じさせながら、すっと終わってしまう「仕合わせな夫婦の話」。

そして今回再読の機会を得て、その夫婦の関係の深さに戸惑うくらいでした。アンナ・カレーニナの冒頭に「幸福な家庭は皆同じように似ているが、不幸な家庭はそれぞれにその不幸の様を異にしているものだ。」という有名な一文があります。この作品はまさに皆同じように似ていると思われる「幸福な家庭」を書いています。恐ろしいほど巧みに。

さらりと書いているようなそぶりで、実は日々の営みがなんと丁寧に描かれていることか。関係のないことを書いているようで、それぞれが夫婦の間で起こる必然だったことが次第に明かされていきます。さり気ない夫婦のふるまいや言葉に「仕合せの芳醇さ」がわきでて・・・夫、三村清太郎がずっと胸に秘めた思い―妻、麻子に言ってやりたかったことがじんとこころに落ちてきます。 

人生のパートナーとして求め、求められた夫婦というお互い。夫の気持ちを追うように書かれたこの作品を是非、夫に読んでもらいたいと思います。妻、麻子のこころはほとんどか描写されていません。どうこの夫婦に自分たち夫婦を重ねていくか、我が夫にもそっと聴いてみたい気がします。

最後に、三村夫婦が3度目の海外駐在地ニューヨークから帰国するフライトの中の会話を引用したいと思います。

「いつだったかしら、わたしのほうが後に残ったほうがいいでしょと訊いたら、図々しいぞとあなたおっしゃったわね」                              

「いや、覚えとらん」                                       

と三村は言った。本当に、覚えていないのだった。

「いえ、おっしゃったのよ。そして、じゃあ、わたしがお先にのほうがいいのね、と言ったら、狡いぞとおっしゃったわよ。―それじゃあ、困るじゃないの。一緒に飛行機事故にでも遭うしかないでしょ。で、わたくしと致しましては、、このフライトでそういうことになってもわるくはない気持ちなのよ。息子たちはどちらも社会人になっていますしね。―それに、結婚生活もあなたのような人と一緒に送れましたしね。これで、飛行機事故で揃ってあの世へフライトできれば―」

「そんなにはうまく行かないのが人生だ」

と三村は言う。(新潮文庫256ページ)

辞書で「仕合せ」を引くと、最初に出てくる意味は「めぐりあわせ。機会。天運。」とあります。何の因果か、めぐりあわせで夫婦となった2人がどう年月を重ねていくか、話してみたくなる本です。

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今週の「ベストセラーの予感!本」レヴューはこちら

PhotoPhoto_2 Mako

◆一瞬でいい 毎日新聞社 唯川恵◆

MOGU’S ATELIER

◆幻夢(イルシオン) 双葉社 佐伯泰英◆

ちーたんママの懸賞生活

◆まこという名の不思議顔の猫 マーブルトロン 前田敬子、岡優太郎/共著◆

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コメント

コニコさん、ご紹介ありがとうございます。
「秘事」奥の深そうな一冊ですね。
ラスト一冊お互い頑張りましょうね。
来月お会いできるのを楽しみにしております。

投稿: ちーたんママ | 2008年1月20日 (日) 00時42分

ちーたんママさん、コメントありがとうございます。投票も本当にあと少しになりましたね。ラスト1冊はお互いに「明るい読書」って感じでしょうか?「マルイチ」、楽しみにしています♪

投稿: コニコ | 2008年1月21日 (月) 12時59分

「河野多恵子の秘事を読む!」と題して、数年前に僕もブログに書いたことがあります。

http://ameblo.jp/tonton1234/entry-10004687235.html

投稿: tonton3 | 2008年5月30日 (金) 07時19分

tonton1234さん、コメントありがとうございました。早速記事を読ませていただきました。わたしも「小説の秘密をめぐる十二章」を読みました。この本も好きな本です。河野さんは切れがあっていい文章を書きますよね。「秘事」の良さをわかってくれる男性が余り私のまわりにいないので、とっても嬉しいです。

それから三鷹の展覧会、来週で終わっちゃうんですね。こちらの記事も拝見して行こうと思っていますhappy01

投稿: コニコ | 2008年5月30日 (金) 20時17分

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えるこみ BOOK大賞応援隊 隊員のちーたんママです。BOOK大賞ノミネート作品をご紹介パート6「ベストセラーの予感!の本」部門より私が読んだ1冊をご紹介しま〜す。『幻夢 (イルシオン)』 双葉社 著:佐伯泰英フラメンコ・ダンサー有馬薫子の恋人、画商...... [続きを読む]

受信: 2008年1月20日 (日) 00時39分

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