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2008年2月27日 (水)

原書「Girl in Hyacinth Blue」(翻訳「ヒヤシンス・ブルーの少女」)

また原書の読了が月末になってしまいました。今月も割り込みで読んだ本をご紹介です。アトウッドの作品は3月にレヴューを書きますね。

Kさんから教えていただいたこの本「Girl in Hyacinth Blue」は、フェルメールの一枚の絵をモチーフにして綴られた連作短編です。

ミステリアスで、ある時はハッとする瞬間を味わいながらも、しっとりとした細やかさを楽しめる秀作です。そこにはフェルメールの絵と同じ静謐な輝きがあります。Honey Light―蜂蜜のような光を浴びた一枚の絵に、観た者の人生を映していきます。

Girl in Hyacinth Blue Girl in Hyacinth Blue

著者:Susan Vreeland
販売元:Penguin (Non-Classics)
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10年ほど前に観た映画「レッド・バイオリン」を思わせる作品です。ひとつの名作が時空を超えて織り成すドラマ。非常に映像的な描写が多く、映画になったらきっと面白い作品になりそうです。

8編の物語が語られるごとに時代を遡っていきます。鍵となるのは一枚の謎めいた少女の絵。

最初の話"Love Enough"の舞台はアメリカのどこか、時は現代。人付き合いを避ける数学の教師が隠し持つ絵画「ヒヤシンス・ブルーの少女」は限りなくフェルメールの絵のよう。緊張感を高めながら物語は絵の過去から持ち主であるその教師の過去へとシフトしていきます。隠したい、消してしまいたい過去。これは、一人では抱えきれない名画の素晴らしさを人には見せられない秘密に関係しています。絵の持ち主である主人公の葛藤は読み手の想像力を刺激し続けます。

そして2話の"A Night Different From All Other Nights"を読むうちに、この小説が、絵の持ち主を遡って描いていく構造になっていることに気づかされます。この話での絵の持ち主は、第2次世界大戦中のアムステルダムに住む、ユダヤ人の少女。彼女の生活を絵の少女も目撃者としてみています。

時代はさらに遡り、17世紀後半、オランダのデルフトへ。最後の2編の"Still Life" "Magdalena Looking"にはフェルメールが出てきます。あの「ヒヤシンス・ブルーの少女」がはたしてフェルメールのものであるかどうかがじっくりと明かされます。

そして読者は考えるでしょう。「行方不明になったフェルメールの絵が今もどこかにあるかもしれない。いえ、フェルメールでなくても、絵の素晴らしさが人の人生を映し、その絵は人にみられることによって、またミステリアスな輝きを増していくのだろう」と。

8編を通して読まれると、この小説の深みがより感じられると思います。フェルメールについても知りたくなりました。

今日の言葉

Susan Vreeland leads us gently backwards in time with a reverse chronology that reveals the painting's complex history.

(スーザン・ヴィリーランドは、時を戻しながらその絵の複雑な過去を解き明かし、私たちを徐々に過去へと誘います。―コニコ拙訳)

ヒヤシンス・ブルーの少女 翻訳は「ヒヤシンス・ブルーの少女」著者:スーザン ヴリーランド
販売元:早川書房
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