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2008年6月25日 (水)

「悩む力」

悩む力 (集英社新書 444C)

ちょっとしたベストセラーになっている「悩む力」(姜尚中著、集英社)を読みました。

これは昨年NHK教育で放送された「私のこだわり人物伝―夏目漱石 悩む力」から派生した本だと思います。

「三四郎」を読んだ後のせいか、最近の新書の字の大きさと行間の広さには驚いてしまいました。177ページ、2時間くらいで読める本です。

序章の「誰にでも具わっている『悩む力』にこそ、生きる意味への意思が宿っていることを、文豪・夏目漱石と社会学者・マックス・ウェーバーを手がかりに考えてみたい」(11ページ)という言葉に惹きつけられて一気に読みました。

この本の中で焦点の当てられている「社会の解体と自我の肥大化」の問題は、今まさに多くの人が抱えている悩み、「他者とのかかわりと自分の殻のひきこもり」という形で現れています。近代社会は情報の洪水や巨大なメディアにさらされながら、自分ですべてを決められる自由という不自由を手に入れてしまったから。何かに頼りたいと思いながら「寄る辺ない社会」に生きる私たち。―確かに。

「まじめたれ」という筆者は、要領の良さよりも不器用なまでに答えのない問を悩み続けることを説いています。人との付き合いも「浅く無難に」より、「他者を認めた上で深く悩め」と。―正論です。

終章でこう締めくくっています。実際に、自らの力を頼りにまじめにとことん悩むということは大変なことです。それだけで神経が磨り減ってしまいそうです。そこで悩んで、悩んで、その先に横着者になってしまえと励ます著者。何か悩みぬいて突き抜けた破壊力を期待しているようです。―なるほど。

ここまで読んで、一様納得はするのだけれど、著者の論理にどこかまだ自我の肥大というものが残っている気がしてしまいました。

夏目漱石が悩んで悩んで探し当てた言葉―「則天去私」。自我(私)を去って、天に全てを任せる……つまり“あるがままに、なすがままに”という境地は、横着者になるのとはチョット違うようで、漱石の「悩む力」の先にあるものは、他者とのつながりもむしろ自我を消す方向だったのではないかと思ってしまいました。

うーん、「悩む力」を読んで、大いに悩んでしまいます。

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コメント

初めてコメントさせていただきます。コニコさんから、ブログをやっていらっしゃると伺ってから、毎朝、遊びに来ていました。そして、たくさんの情報を楽しく吸収させていただきました。改めて感謝します。
今日の話題、私も横着者になるという論旨には賛成しかねます。則天去私は20歳の頃、嵌っていた言葉。懐かしいです。
今年が源氏物語誕生1000年と言うことで私も源氏を瀬戸内訳で読みました。その後、枕草子、平家物語、太平記と読んで、森鴎外、夏目漱石まできたところです。今は三四郎を読んでいます。昨日の三四郎の話題には思わず、偶然の一致に嬉しくなりました。
カラマーゾフも亀山訳で2巻まで(図書館の予約待ちです)。
赤毛のアン展には行きたかったのですが、とうとう行けずに終わってしまいました。でも、コニコさんのブログで楽しむことが出来ました。ありがとうございます!
お礼や感想、きりがないので今日はこの辺で失礼します。

投稿: ルーシー | 2008年6月26日 (木) 06時54分

ルーシーさん、初コメントありがとうございます。こちらこそ読んでいただいているのがどんなに励みになっているか、拙い文とまとまらない好奇心でいっぱいの落書きでも、続けているといいことがあるものですね。

今日のコーヒーは特別美味しくなりそうです。どうぞルーシーさんものんびりと涼しい今日一日をお過ごしください。

投稿: コニコ | 2008年6月26日 (木) 07時55分

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