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2008年6月13日 (金)

『ティファニーで朝食を』時代のトルーマン・カポーティ

昨日の続きの「ティファニーで朝食を」です。

”あとがき”から印象的だったことをいくつか書きます。

まずは映画「ティファニーで朝食を」の主役について。村上春樹も映画をリメイクしてほしいし、するなら誰がホリーをやったらいいか悩んでいました。わたしも原作のエッセンスを損なわない脚本でリメイクしてほしいものだとかねてから考えていました。ホント、今だったら誰でしょうか? ちょっと細目にしたスカーレット・ヨハンソン?「プロヴァンスの贈り物」のアビー・コーニッシュ?皆さんのおススメ女優さんは?

Photo そしてもうひとつがカポーティが作家としてどうやって小説を書いていったかについて。村上春樹が、作家カポーティが歳とともに小説が書けなくなっていったことを分析しています。(写真は1948年24歳のカポーティ、カール・ヴァン・ヴェクテン撮影)

最初に、「ティファニーで朝食を」以降カポーティが「すらすらとものを書ける若者」でなくなり、その苦しみを自分自身で告白している文を引用します。

ある日、私は小説を書き始めた。自分が一生を通じて、気高い、しかし情けを知らぬ主人に鎖で繋がれることになるなどとは露知らず。神があなたに才能を与えるとき、彼はまた鞭をもあなたに与えるのだ。そしてその鞭は自らの身体を厳しく打つためのものである。…私は今、ひとりで暗い狂気の中にいる。ひとりぼっちで、一組のカードを手に。…そしてそこにはもちろん神の与え給うた鞭も置かれている(本文より)

1956年に私の大好きな「クリスマス・メモリ」を、そして1958年に「ティファニーで朝食を」を書いてからの作家としてのカポーティの創作に向けての心情はこんなに暗澹たるものだったとは。村上春樹の分析はこうです。

 自らを鞭打つ(self-flagellation)というのは言うまでもなく、イエス・キリストの味わった苦難を追体験するための、宗教的自傷行為である。カポーティの苦しみが神的(霊的)なるものと、肉的(物質的)なるものとの狭間で生み出されたものであることにおそらく異論の余地はないだろう。カポーティの物語の主人公たちもまた、そのような狭間に生きている。彼らの多くはイノセンスの中に生きようとする。しかしイノセンスが失われたとき(多かれ少なかれそれはいつか失われることになる)、それがどこであれ、彼らの住んでいる場所は檻のようなものに変わり果ててしまう。そしてそこに残されているのは、婉曲な自傷行為でしかない。(本文より)

「ティファニーで朝食を」以後、小説を創作する苦しみを8年もかかえ、ついに書いた作品がノン・フィクション・ノベル「冷血」(1966年)。その後、多少の小説も書きましたが、若い時の輝きを再び取り戻すことがなかったようです。

未読の「冷血」、いつか読んでみたいです。映画「カポーティ」も断然見たくなったし。それにしても、ごく若い時に小説家としてのピークを迎えてしまった作家、カポーティ。自らを鞭打つ運命を背負いながら・・・。なぜかこのタイプはアメリカの若い男性作家に多いような・・・。サリンジャーしかり。

今日はカポーティを通して”作家が小説を書き続ける”ことを考えてみました。

今日の言葉

Flagellation is the act of beating yourself or someone else, usually as a religious punishiment. (鞭打ちは通常宗教的な罰として自らあるいは人を鞭打つ行為。)→self-flagellation(自責、自虐)

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コメント

こんにちは。
「ティファニーで朝食を」は私も高校生のときに映画を見て、翻訳ですが原作を読んで、そのギャップにショックを受けました。大人になってからは、やはり原作に忠実な「ホリー」がいたらいいなと思っています。ヘップバーンはもちろん大好きなのですが。ところで「冷血」は最近翻訳を読み、映画「カポーティ」も見ましたが、すばらしいです。どちらもおすすめです。ところで、つたない私のブログにリンクを張らせてもらっていいですか?ぜひよろしくお願いします。

投稿: 点子 | 2008年6月14日 (土) 20時27分

点子さん、ご来店ありがとうございます。リンクしてくださるんですか?嬉しいですね。ありがとうございます。私の方も”お気に入りブログ”にさせていただいてよろしいでしょうか?

そうですか。本に映画にやっぱり両方おススメですね。わたしも翻訳で「冷血」を読んでみます。(でも読みたい本がまだまだ山積みですぐは無理そうです…ガンガン早く読めるといいのですが)

投稿: コニコ | 2008年6月14日 (土) 22時21分

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