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2008年6月12日 (木)

村上春樹訳「ティファニーで朝食を」

ティファニーで朝食を

ティファニー・ブルーが鮮やかな表紙にちょっとすました名無しの猫ちゃんのイラスト―ニューヨークを舞台にした「ティファニーで朝食を」は見た目にもシャレていてプレゼントしたくなる本。トルーマン・カポーティ
著、そして村上春樹訳。

原書「Breakfast at Tiffany's」を読んで映画「ティファニーで朝食を」を観て、そしてぐるりと回ってもう一度原作を日本語でしっかり読みたくなりました。村上春樹訳とあればなおさらです。

映画とは全く違う原作の後半部分が原書できちんと読めていなかったとわかりました。イノセントだったホリーがサリー・トマトの事件で捕まり、「跡取りを亡くしてしまって」からホセとの別れ話までのセリフは、無防備に攻撃的で悲しいものです。ここのニュアンスが英語だと難しかったです。

ブラジルへ旅立つために空港に向かったタクシーで、ホリーは名無しの猫ちゃんを放してあげてから、すぐ後悔するのですが、結局見つからずその場を去ることになります。

 僕は彼女に約束した。後でここに戻ってきて、猫を必ず見つけるから、と。「猫の面倒は僕がみるから、心配しなくていい」

 彼女は微笑んだ。喜びを欠いた、はかない微笑だった。これまで目にしたことのなかった微笑。(中略)

「私は怖くて仕方ないのよ。ついにこんなことになってしまった。いつまでたっても同じことの繰り返し。終わることのない繰り返し。何かを捨てちまってから、それが自分にとってなくてはならないものだったとわかるんだ。いやったらしいアカなんてどうでもいい。太っちょの女だって、なんでもない。でもこれだけは駄目。口の中がからからで、どう力をふりしぼっても、唾ひとつ吐けやしない」。彼女は車に乗り込み、シートに沈み込んだ。「ごめんなさいね、運転手さん。行ってちょうだい」(本書136ページ)

彼女がもっていた野生のイノセントさはどうなったのか、その後は語り手の「僕」にもわからないのですが、彼と共に過ごした”あのホリー”が幸せでいることを祈りつつ、彼女の面影をそっと胸におさめておきたい気持ちです。

そして、この本を読むもうひとつの楽しみが、村上春樹の「あとがき―『ティファニーで朝食を』時代のトルーマン・カポーティ」。明日はそちらの紹介をします。

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コメント

ティファニー~、他の人の訳で大昔読んだことがありますが忘れましたので、こっちも読んでみたい!
ティファニーブルーは大好きなので、この本は”買い”です(^^)

投稿: クーネルシネマ | 2008年6月12日 (木) 23時21分

クーネルシネマさん、毎度。このティファニー・ブルー、ホントきれいですよ。ついでに本物のティファニーもなんて気になっちゃいそう。
ところで、いつもながら誤字脱字が多くてすみません。読み返してみてとっても恥ずかしくなりましたbearing

投稿: コニコ | 2008年6月13日 (金) 21時45分

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