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2008年8月22日 (金)

「ルポ 貧困大国アメリカ」

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

気になるタイトル―「ルポ貧困大国アメリカ」(堤 未果著、岩波新書)、世界一の金持ち国のはずのアメリカのことです。複数の友人から薦められて一気に読みました。ただし、読み進むうちに気持ちはどんどん暗くなっていきました。

マイケル・ムーアの映画がアメリカの暗部を描いているにしても、そこにはどこかユーモアのある場面もありますが、この本は、唯一資本主義の王者となったアメリカというシステム―グローバリゼーションの脅威がこれでもかと書かれていて、そら恐ろしくなります。

 本の中ではアメリカという言葉を暫定的につかっていますが、むしろアメリカが作り出した「暴走的市場原理システム」(本文9ページ)の存在が問題になります。その「弱肉強食」のシステムが世界にかつてない程の格差を産み出し、構造的にその格差を押し広げる方向に向かっている現状が読むものに迫ってきます。舞台はアメリカですが、市場原理第一という風潮は日本も同じ。ひたひたと押し寄せるアメリカ構造格差を感じざる負えませんでした。

小さい時から貧困による偏食が肥満を引き起こし、学校もろくに行けず、働くところもマックで働ければいい方というアメリカ経済を底辺で支えるヒスパニック系の移民たち。

「自己責任」の名のもとで信じられない医療費を請求され、自己破産する中間層。出産費用の相場がなんと1万5000ドル。(165万円くらい)医療問題はマイケル・ムーアの「シッコ」でもとり上げられていましたよね。

そんな経済的な理由もあってか健康への関心は異常で、その上、メディアが常に不安をあおるようなことを書き立て、国民が「フード・ファディズム」(特定の食品を摂れば健康になれると思い込むその流行)になっているというのです。(どこかの国でもTVで同じような健康オタク番組をやっていますが)

出だしから衝撃的な事実が次々と明かされ驚いてしまうのですが、一番恐ろしいと思ったのが、「『落ちこぼれゼロ法』という名の裏口徴兵政策」(100ページ)です。この法案は2002年にブッシュ政権が新しい教育改革法として打ち出したものです。スローガンのNo Child Left Behind Actはわかりやすく国民に訴えるものだと思っていました。が、この法案の真意は”個人情報”だというのです。貧しくて大学に行きたくても行けない高校生を狙い撃ちにする軍リクルーターたち。(日本でも2005年に個人情報保護法が施行されましたが、かえってそれ以降のほうが個人情報が漏れている気がします。)そして「一元化される個人情報と国民監視体制」(170ページ)。情報によって貧しい人をピンポイントで探し出し、目の前にパンをちらつかせるというイラク兵の徴集の仕方。

それにしても暗すぎます。貧しさの向こうには文字通り、夢も希望もなし。そんな世界を飲み込んでしまうようなグローバリゼーションに対して、著者堤未果さんがあとがきでのべている「決して無関心や無気力になってはいけない」というメッセージがただひとつの力でした。

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コメント

「ルポ貧困大国アメリカ」、読んでみたいと思います。「遠い朝の本たち」は図書館に予約をいれました。バーチャル美術館は先日ゆっくり楽しみました。毎朝、コニコの喫茶店を覗くのが日課になっています。水曜10時、「正義の味方」観て見ます。(起きていれば…。このところ日の出と共に起きているので、早く眠たくなってしまいます。)次から次、心惹かれる情報に、楽しく拝読。カラマーゾフの兄弟も5巻を手にしています。カラキョウの報告、楽しみにしています。

投稿: ルーシー | 2008年8月25日 (月) 21時24分

ルーシーさん、いつも心遣いをありがとうございます。楽しい時間を過ごさせて、こちらこそ発散させていただきました。
そうそう、カラキョウもまた読まなければ!
「遠い朝の本たち」の感想も聞かせてくださいねwink

投稿: コニコ | 2008年8月26日 (火) 11時27分

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