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2008年10月28日 (火)

手間をかけた家事という魔法―原作「西の魔女が死んだ」

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

映画がよかったので、さっそく原作「西の魔女が死んだ (新潮文庫)」(梨木 香歩著)を読んでみました。

あらためて文字をたどると、作者の巧みな魔法が身にしみてきます。

そして、まいのおばあちゃんは本当に”魔女”だったのだと思えます。おばあちゃんの魔法とは?

ことのはじまりは・・・。まいがこころもからだも苦痛を感じているのは、まいのママも充分承知していました。でも、どうしていいかわからない。

”感受性が強すぎるのね。どうせ、何かで傷ついたには違いないんだろうけど。昔から扱いにくい子だったわ。”(「西の魔女が死んだ」15ページ)

苦しんでいる子どもをどう扱っていいか、子育ての中で悩んでいる親は少なからずいるはずです。そんな時、よく言われるのが「田舎でゆっくり休めばいい」ということですが、そこにはただ自然とともにあればいいというのでなく、その自然の恵みを知り、生き物のいとなみを知る人とともにあればこそ、魔法のようにこころもからだも癒えていく気がします。まいのおばあちゃんは、そんな恵みやいとなみを知る”知りびと”(コニコの造語、”おくりびと”にかけてみました)だったのではないでしょうか。そう、それが西の魔女の魔法のことば、”I know.”でもあったように。

おばあちゃんが、傷ついて苦しんでいるまいをどう扱うか・・・

それは、まいの気持に沿った形で、具体的な家事を指示していくというふうに始まります。いつでも絶妙なタイミングで。

機械ではない、自分のからだを使って、手間ひまをかけて家事をしていく中で、まいは自分の気持を活き活きとさせていきます。

たとえば、おばあちゃんとのワイルド・ストロベリーのジャム作り。天国のおじいちゃんからの奇跡のプレゼントであるワイルド・ストロベリー。まるで、まいに愛情というこころの栄養を与えるように、おばあちゃんはたわわなこのワイルド・ストロベリーを甘く甘く煮込みます。手間をかけて煮込んだジャムは魔法のジャム。まいのこころの飢餓も満たしていくようです。

また、まいのこころがゲンジさんへの嫌悪感でいっぱいになれば、おばあちゃんはさっとシーツを足踏みして洗濯してほしいとお願いします。熱心に踏み続けている間にまいのこころの汚れも洗濯できていきます。真っ白のしみひとつないシーツにラベンダーの香りをしみこませば、夜はぐっすり魔法の眠りと誘われることでしょう。

食事の用意も手間をかけて。まいは鶏を過剰に意識しすぎ、はじめはなかなかうまい具合につきあえないのですが、卵をとってきてとおばあちゃんに頼まれて、少しずつ生き物とのつきあいも学んでいくことになります。自然の恵みをこころとからだで受け止め、自分もそのいとなみの一部となっていることを鶏の卵と死ということでも知ったのではないでしょうか。

どこかありふれた日常の家事が魔女の手で巧みにこなされて、まいは悠久のこころのやすらぎを得ることになります。たとえけんか別れしても、まいはおばあちゃんの最後の魔法のことばを体験し、おばあちゃんとの魔法の時間が泉のように蘇っていくのです。

おばあちゃん、大好き

まいが聞きたいと願うその声は、もちろんおわかりですね。

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奇遇にも本を読んだ複数の方々から、原作のイメージを大事にしたかったので映画をみていないという意見が寄せられました。たまたまわたしは映画を先に観て、原作を読みましたが、原作を読んでみて、映画が本のエッセンスをあざやかに色づけしている気がしました。評価の分かれ目は、やはりおばあちゃん役のイメージだと思いますが、日本人より丁寧できれいな日本語を話すサチ・パーカーさんは、原作の”西の魔女”を違和感なく演じられているように感じられました。是非、映画と原作を両方あじわった方、ご意見ください。

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コメント

「西の魔女が死んだ」私も本を読みました。とても心が癒されました。田舎での生活が人間の生活の原点を教えてくれる・・・勿論それはまいのおばあちゃんの魔法のトリックに操られるがゆえに・・・と言えるでしょうが。

いろいろな家事における「おばあちゃんの智恵袋」的に読んでも勉強になることがいっぱい。パイやジャムやサンドイッチのレシピブックのように読んでも楽しい!

私も小6の春休みに田舎のおばあちゃん家に一人で泊まりに行き、そこで過ごした2週間は今でも大切な思い出です。やはり女の子がおばあちゃんと過ごす楽しさって独特なものがある気がします。ちなみに小学生の息子達もこの本を読みましたが、反応(盛り上がり)がいまいちだったかも。やはり男の子の感覚はちと違うのな・・・?
私には大好きな本の1冊です。コニコさんのお話読んで、映画もぜひ観てみたくなりました~!

投稿: 友達のI | 2008年10月28日 (火) 22時34分

Iさん、お気に入りの本だったのですね(v^^V)梨木香歩さんの本をはじめて読みましたが、他の本も読んでみたくなりました。

私自身は生まれたときに、おばあちゃんが亡くなっていたので「おばあちゃんとの想い出」というものにあこがれがあるのかもしれません。Iさんの少女時代のおばあちゃんとの体験も、きっと今のIさんをつくっている大切な一部なんだと思います。

息子さんたちには今イチでしたか~。男の子と女の子の感想の違いってあるのかどうか、これも興味のあるところですね。

投稿: コニコ | 2008年10月29日 (水) 14時03分

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