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2008年11月 4日 (火)

「自負と偏見のイギリス文化」

自負と偏見のイギリス文化―J.オースティンの世界 (岩波新書 新赤版 1149)

以前ご紹介した「不機嫌なメアリー・ポピンズ」の著者、新井潤美さんの新書、「自負と偏見のイギリス文化―J.オースティンの世界 (岩波新書 新赤版 1149)」を読みました。

このところのオースティン・ブームで、すっかり日本でもジェイナイト(Janeiteと書く。一言でいうとオースティン・オタクのこと)が増殖中です。といいながら、わたしもジェイナイトの一人でございます。そんなオースティン・オタクに、新井さんのこの本はオースティン小説の背景やトレビアを知るにはもってこいです。

本のタイトルにご注目。「はじめに」の”本書のねらい”の中で、新井さんは、オースティンの魅力に迫りたいとしていますが―どれどれ、その魅力の秘密は?

私は思慮深いもの、善良なものを笑ったりはしていないつもりです。愚かなこと、馬鹿げたことはたしかに面白く思いますし、そういう事柄に出会うたびに笑っていますが。

「自負と偏見」のヒロインのエリザベスが、恋の相手のダーシー氏に言う言葉であるが、オースティン自身の「笑い」の定義でもあるとして、オースティン研究たちにくりかえし引用される、有名なくだりである。オースティンの作品は攻撃的な風刺でもなければ、現実からかけ離れたメロドラマでもない。自分の姿を笑う余裕があるという「自負(プライド)」、そして自分が愚かであり、馬鹿げたことだと判断した事柄を容赦なく笑う「偏見(プレジュディス)」、これがオースティンの笑いでもあり、イギリス人の笑い、そしてイギリス文化の特性でもあるのだ。(本文 XV )

という感じで始まります。ホント、オースティンの風刺は、ちょっと自虐的なところもあるけれど、どこかプッと笑ってしまう余裕を感じさせます。イギリス人の笑いと日本人の笑いに共通するものもあるのでしょう。

この本を読んで2つの発見がありました。一つめは、オースティンの作品がヴィクトリア朝時代-Victorian Age(1837―1901)のものだと思っていたのが、そうではなく、Regencyと呼ばれる摂政時代(1810―1820)のものだということ。ヴィクトリア朝時代が、とりすました、偽善的な風潮であったのに対して、新井さんいわく、摂政時代は”いわば奢侈と堕落の時代”(3ぺージ)だったといいます。オースティンの作品に、ヴィクトリア朝の教訓めいたところをいままで私は感じたことがなかったので、この指摘に大いに納得しました。

二つめがイギリスのノーベル賞作家、ラドヤード・キプリングも「ジェイナイト」であり、そのものズバリ「ジェイナイト」と題した短編小説を書いていたということ。うーん、読んでみたいです。当時のイギリスの「ジェイナイト」は主に男性であり、学者や編集者や作家などの知的職業に就く「紳士」たちだったというのにも驚きました。今の日本のオースティン・ファンの大半は女性でしょうから、ずいぶんとファン層が違っていますね。

余談ながら、キプリングとオースティンというキーワードでいろいろ調べていたら、Jane Austen Todayという面白いサイトを見つけてしまいました。それによると、第1次世界大戦でシェル・ショックという精神障害を患った退役兵には、戦場の悪夢を克服するためにオースティンの作品を読むよう薦められたとか。

オースティンは、やはり深いヽ(*≧ε≦*)φ

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コメント

新井さんは語学力ももちろんですが、英国人の感覚を身に着けているかたのようなので(過去の彼女の本は全て読んでいるので)、うんと期待してこの本を手に取ったせいか、もっと書けるでしょう?出し惜しみしてるんじゃないですか?という気持ちになりました。新書だからしょうがないのでしょうね。そのうち単行本が出るかしら?

もちろん「知らなかった!読んでよかった!」と思った部分もいっぱいありました。(Austen自身が語ったJane Fairfaxの寿命とか。→わたしにはけっこう重要な点なので。)

実はわたし、Janeniteのスティッカーをスーツケースに貼ってます・・・(^-^; かなり重症かも。

http://en.wikipedia.org/wiki/Janeite

投稿: あけきち | 2008年11月 5日 (水) 07時35分

ごめんなさい、Janeiteとするつもりがnを入れてJaneniteと綴ってしまいました・・・。重症だけどJaneite失格ですね、これでは。coldsweats01

投稿: あけきち | 2008年11月 5日 (水) 07時38分

あけきちさん、この本を教えていただきありがとうございました。先日は日経にも書評が出ていたりして、ボチボチ売れているのでしょう。あけきちさんの”出し惜しみ”説は、当たっているかも。この本、どうみても映画「ジェイン・オースティンの読書会」を観て、オースティンに興味をもった人向けって感じしませんか?まずはこれをカタログ的に読んで、次に翻訳をどうぞっていうふうに。また来年あたり次なる本が出るのを期待しましょう。

あけきちさんが仰るとおり、「作者自身が語る登場人物のその後」は興味深かったですね。
わたしは、ビングリー夫人の好きな色が緑で、ダーシー夫人は黄色というところが「そうなんだ~」と面白かったです。キーラは黄色、似合うかしら!?なんて思いながら読んでました。

投稿: コニコ | 2008年11月 5日 (水) 22時55分

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