« 祝*「ハゲタカ」映画化で再登場* | トップページ | もっとあったサリンジャーのこと―文芸誌「monkey business」vol.3.5 »

2008年11月18日 (火)

「グレート・ギャツビー」読書会(3)

Daisy 今日はギャツビーの読書会。もう3回目になりました。今回の読書会は、学生の時のような英語講読式で一語一語丁寧に読んで行っています。2回目の目標にした第1章の終わりまでは行きませんでしたが、いよいよトムとデイジーの間の亀裂が明るみになってきます。

夕暮れの景色に促されて、トム、デイジー、ジョーダン、ニックは薔薇色のポーチで夕食を食べる場面です。デイジーの突然の言いがかり、手を怪我したというところで、

"You did it, Tom," she said accusingly.  "I know you didn't mean to but you did do it.  That's what I get for marrying a brute of a man, a great big hulking physical specimen of a -"

"I hate that word hulking," objected Tom crossly, even in kidding."

"Hulking," insisted Daisy.

「あなたのせいよ、トム」と彼女は咎めるように言った。「わざとやったんじゃないことはわかってるけど、でもとにかくあなたのせい。獣みたいな人と結婚すると、こういう目にもあわされるのよ。なにしろ人並みはずれてうすらでかくって、腕力のあり余った男と―」

「うすらでかいという言葉は気に入らんな」とトムは気を悪くしたように言った。「たとえ冗談にせよ」

「うすらでかい」とデイジーはしつこく繰り返した。(「グレート・ギャツビー」村上春樹訳25ページ)

夫への不満が一気に爆発したようで、この「うすらでかい」という訳が面白いですね。”うすらばか”の”うすら”と”ズウタイの大きい”という”でかい”をくっつけて「うすらでかい」とは。おちょくりと馬鹿にした気持ちがよく出ています。それからspecimenという言葉は”標本”という訳しか知らなかったのですが、人に対して否定的な言い方をする時に”やつ”という感じで使うのですね。《例えばA shabby specimen (しけたやつ) What a specimen (変なやつ)という具合》

その後、トムが本の話を始め、白人至上主義を述べるところで、皆のことを"Nordics"というのですが、デイジーのことをいう時だけちょっと躊躇うんですね。これはデイジーのことを白人並みに優秀でないと馬鹿にしているためなのでしょうか?それとも「長身、金髪、青い目」というノルディックの特徴にデイジーが合ってないということだったのか、疑問が残りました。

そんな中、愛人からの電話。ここからがデイジーの演技に魅せられるところ。おおげさな言いようにニックも最後には食傷気味になって行きます。

The instant her voice broke off, ceasing to compel my attention, my belief, I felt the basic insincerity of what she had said.  It made me uneasy, as though the whole evening had been a trick of some sort to exact a contributary emotion from me.  I waited, and sure enough, in a moment she looked at me with an absolute smirk on her lovely face as if she had asserted her membership in a rather distinguished secret society to which she and Tom belonged.

デイジーがそこで声に詰まって、こちらの注意と誠意を釘づけにすることをやめた途端、彼女の語った話に含まれている基本的な不誠実さに、僕は気づかされた。そして居心地悪い気分になった。今夜の集まりそのものが、僕から彼女にとって都合のいい感情を引き出すために拵えられた、ある種の巧妙な仕掛けだったのではあるまいかという気がしたほどだ。何も言わずに待っていると、彼女はほどなく案の定というべきか、その美しい顔に非のうちどころのない笑みを浮かべて僕を見た。まるで「なんといっても私とトムは並みではない特殊な社会に属しているのだから」とでも言うように。(同上34ページ)

ここでニックとともに読み手も、”デイジーの正体見たり”という気がしましたね。このbasic insincerity(基本的な不誠実さ)というのがみそ。 トムは、見るからに傲慢で自分中心の感じを出していましたが、デイジーも実は薄いオブラートの下に透けて見える”上から目線の傲慢さ”がここでわかってしまいます。

さて、続きは次回。今度こそ第1章の最後までたどりつくでしょう。1章最後のギャツビーの姿を楽しみに。

|

« 祝*「ハゲタカ」映画化で再登場* | トップページ | もっとあったサリンジャーのこと―文芸誌「monkey business」vol.3.5 »

原書でキャンペーン」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

英米文学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/114487/25453294

この記事へのトラックバック一覧です: 「グレート・ギャツビー」読書会(3):

« 祝*「ハゲタカ」映画化で再登場* | トップページ | もっとあったサリンジャーのこと―文芸誌「monkey business」vol.3.5 »