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2008年11月12日 (水)

ユリイカ―フェルメール対談

ユリイカ 2008年8月号 特集=フェルメール

フェルメールがすっかりブームになって、「いちよう、『フェルメール展』にいってきました」というのが世間のご挨拶になっているようなこの頃ですが、わたしもご他聞に漏れずフェルメールに引き込まれ、フェルメール展にも行ってきたひとりです。

そして先日、気になる「ユリイカ 2008年8月号 特集=フェルメール」を読んでみました。

フェルメール専門家としてお馴染みの小林頼子さんの「フェルメール作品解説」でじっくり作品を拝んだ後、つらつらとめくると、あの「液晶絵画」の森村泰昌さん(自ら「真珠の耳飾の少女」のモデルになった人)と浅田彰さんの対談がありました。タイトルは「燐光する天体―光の結像、あるいは視覚美術の原点」。これが刺激的でした。

浅田 フェルメールは光が像を結ぶということ自体の驚きにずっと立ち止まった人という感じがしますね。むろん、フェルメールの絵画はきわめて巧緻に描かれていて、幾何学的に構図を解析したり、図像的に意味を探ったり、それはいくらでも可能だけれど、どこか虚しい気がする。むしろ、フェルメールは寡作なアマチュアだったと言い切ってみたほうがいいんじゃないか。(37ページ)

森村 フェルメールにとってデルフトっていう環境は大きいです。デルフトという町は多分にアマチュアリズムを生み出したというところがあります。(中略)デルフトという場所で生まれた偉大なるアマチュアリズムの魅力はおおいに再評価すべきです。(38ページ)

「半径500メートルの人生」といわれたフェルメールの魅力は、デルフトという小さな町によって生み出され、プロというものに馴染まず独自の絵を描いていったという考えがすごく腑に落ちて新鮮でした。

さらに対談では森村さんがフェルメールとの関わりを自身の作品制作経験と絡めて話しています。中でも「絵画芸術」を模した《フェルメール研究(3人の位置)》のお話が納得。(文化の日に放映されたTV「フェルメールの暗号」のやたらドラマチックに解説したものより何倍も説得力があります。)

森村 僕は「液晶絵画」展という展覧会に参加したのですが、この液晶状態、液体でありながら結晶でもあるという揺らぎの感覚のなかで時間が流れ出すというか、そんな世界をフェルメールの絵画世界は持っている。魅力的な時間との戯れというか出会いという感じがして、やはりそれは特異な世界ですよ。(44ページ)

浅田 森村さんは《絵画芸術》を実際に立体として再構成し、インスタレーションとして作品化しておられるわけですけれど、実際にやってみられて何か発見はありました?

森村 あれはね、遠近法的なものを超えたいという意思がフェルメールにはあったんじゃないかと思ったきっかけの一作なんです。フェルメールの時代には遠近法的に正しいということは画家として踏み行なうべき常識であったわけです。しかしながら遠近法に頼り続けていると、「あ、これは遠近法を使っているな」と誰もがわかってしまい、そうなってくるとやっぱり退屈だろうなと思うんです。 ではその退屈をどのような方法で回避するのか。《絵画芸術》はその試行錯誤の結果生み出された絵だと僕は思っている。(46ページ)

その後、作品のカーテンだの、椅子だの位置関係を説明してくださっているのですが、これがまた「なるほど~」と思える、実際にスタジオでものを並べてカメラのファインダーを眺めてみたからこそいえる実感がありました。

最後に「”なぜ今日本でフェルメール”なのか?」という話では、森村さんの「家庭画報」説というのがあって、面白いし愉快ながら当たっているかもと思えました。もはや皇室的な拠りどころを失った今の日本で、フェルメールの絵は、日本人の感受性の深いところにつながっているのではないか、失われた日本の原点みたいなものを刺激する一石なんですよ。」というようなことを言っています。そういえば、フェルメールの絵の特徴は、「小さい、少ない、おとなしい」と、どこか”昔の良識のある日本人”の彷彿させます。なんだか、そんなことを読んでいると、もはや日本人の原点は、行列を作って美術館に観に行くものになっちゃったのかな~と寂しい気もしますが・・・。(フェルメール展の来場者は「たくさんいる、着飾って、声の大きい」おばさんが多かったな~(あ、それは私か!)

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