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2009年2月23日 (月)

「ノーティアーズ」

No 以前にレビューした「神たちの誤算」の著者渡辺由佳里さんの作品、「ノーティアーズ」を読みました。第7回「小説新潮長篇新人賞」を受賞しています。

ヒロインのジューン・ムラカミは、30歳を過ぎた日系アメリカ人。ウォールストリートやインターネット業界で勝負してきた。仕事は出来るのだけれど、なかなか自分の思ったようなキャリアがつかめない。頑張りすぎて疲れ気味の彼女は私生活でも問題を抱えている。そんな時ジャックと出逢い、ジューンは自分自身をもう一度見つめなおすことになり・・・・

という具合に、今回のヒロインも一生懸命にやっているのに他の人に出し抜かれて「なんでこうなってしまうの。」という状況に陥っています。彼女の働き振りをみていると、ビジネスの世界で、それも入れ替わりの激しいインターネット業界で生き抜くのは、こんなに神経と身体を酷使することかとビビッてしまいます。それも上のポジションにいったらそれで満足するかというと、さらに欲望は大きくなりもっと高いポジションと報酬がほしくなるという欲望依存症のような状態になってしまうのがこわいところ。ジューンもジャックに会わなければ、エンドレスのサバイバル・ゲームに巻き込まれていたことでしょう。

ジャックがジューンを案内したところは、倒産寸前の老人施設「ハニービー」。善意あふれる、けれども経営のいろはも知らない経営者チャーリーとマーガレットをジューンがどうやって助けていくかも読みどころの一つ。アメリカの主婦たちの「”善意の行為”をしているという気分をあじわうのが大切」という心理を逆手にとって老人施設の人手不足を解消したり、入居者の経験や技術を地域の子どもたちのために役立てるといったアイデアは、説得力があり、目からウロコでした。

ああ、ジャックとジューンはうまくいってくれるのだな、っと思っていたのにアダムという元カレが登場し、自体は思わぬ方へ。結末は読んでのお楽しみ。

そうそう、このアダムという男、出てきた時からなんだか高圧的でしたが、読んでいるうちに「グレート・ギャツビー」のトム・ブキャナンに思えてきてしまいました。「ジャグアのようにしなやかな筋肉を優雅な毛皮の下に隠し持つアダム」(225ページ)なんていう描写をみるとやっぱりトムだと頷いてしまいました。

最後にタイトルのこと。「”ワンハンド・ワンミリオン・ノーティアーズ”一勝負、百万ドル、泣き言は言いっこなし。。ソロモン・ブラザーズのディーラーたちの生活を暴露した『ライヤーズ・ポーカー』という小説があったが・・・」(9ページ)というように泣いてはいけないヒロインの話と思いきや、最後は声を上げて泣いてしまうジューン。この場面、気に入っています。思わず「好きなだけ泣いたらいい。」って声をかけてしまいました。

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コメント

渡辺です。コニコさん、素敵なレビューをありがとうございます。ずいぶん昔に書いたものなので、自分でも内容を忘れていましたcoldsweats01
コニコさんのブログは読みごたえのある情報満載でいつも楽しみにしています。
これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿: 渡辺 | 2009年2月24日 (火) 06時00分

渡辺さん、コメントをありがとうござます。早速貴ブログの紹介をさせていただきました。
わたしは日本語でもまごまごしているのに、本当に渡辺さんのすごい読書量には感服します。

オースティンもお好きのようで、ちょっと嬉しいですnotes

投稿: コニコ | 2009年2月24日 (火) 21時00分

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