漫画「ファウスト」
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先日、「ネオ・ファウスト」が手塚治虫作「ファウスト」もの3つの内の一番最後の、そして絶筆になった作品だとご紹介しました。今日は、手塚氏がなんと21歳の時に描いた最初のファウスト翻案もの、ずばりタイトルも「ファウスト (朝日文庫)」。 原作の「ファウスト」が2部作なのに対して、思い切った省略で複雑なストーリーがわかりやすく、一気に読める漫画になっています。 |
表紙の若い青年は若返ったファウスト。そしてそのファウストを乗せているのがかわいらしい黒犬のメフィストフェレスです。悪魔というよりもぬいぐるみのよう。
マルガレーテがお姫様で登場し、しかも実は神さまから使命を受けた天使だったとは、さすが手塚氏の大胆な発想。
彼が翻案した「ファウスト」3つのうち一番原作に近い作品で、若い手塚氏がファウストにいかに魅せられているかが感じられるものです。手塚氏は、神と悪魔という宗教的な問題というより、人間の欲望、野望や罪の意識などの、人間そのものに惹かれていったのでしょう。それで悪魔をしっぽはあるけれど、怖いものというより人間の近くにいる犬ような存在として描いたり、天使をお姫様にしたりという自由な発想が出来たのかもと推察しています。
この作品は、3つの翻案中ではやはりまだ絵に若さがみられますが、21歳ということは手塚氏がまだ学生だった頃のはず。天才の片鱗がうかがえます。
明日は2つ目の「ファウスト」翻案作品「百物語」について書きます。
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