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2009年4月30日 (木)

原書「In Our Time」

In Our Time

翻訳教室In Our Time(Ernest Hemingway、Scribner)

 月末恒例の原書レビューです。今回はフィッツジェラルドと並んでロスト・ジェネレーション作家に挙げられるヘミングウェイの初期の作品「In Our Time」(邦題「われらの時代に」)です。

この本は柴田元幸氏の「翻訳教室(柴田 元幸著、新書館)」にも紹介されている本で、前々から読んでみたいと思っていたものでした。

「翻訳教室」によると、この作品はまず1924年に in our time という小文字のタイトルで16の超短篇集として出版されたそうです。そしてその翌年、各超短編にもう少し長い短編が後にくっついて、16組の超短編+短編集として新たに世に出たということです。タイトルも大文字になり、 In Our Time。

今回挑戦した原書は一般に知られる大文字の In Our Time の方です。

いや~、フィッツジェラルドを読んだ後のせいか、ヘミングウェイの文章はcrisp。歯切れがよいというコトバでは生温い。むしろ切れ味のよいナイフといった方があっています。ボケッとしているとばっさり切れているのに気がつかず。「あれっ、何が起きたの?」という具合。そうそう、なんでナイフのイメージかというと、この本全体に血のにおいが漂うんですね。特に章の扉にあたる超短編の部分は戦争や闘牛の凄惨なシーンが写実的に淡々と描かれています。

16短編のうち、"Indian Camp"と "The Battler"はヘミングウェイを語る上ではずせないものらしいのですが、短編としての緊張感は神業的です。さすがアンソロジーによく載る名作。この2つを別にしても、帰還兵の憂鬱を描いた"Soldier's Home"や彷徨えるアメリカ人的な"Cat in the Rain"も印象的。

英語もそんなにむずかしくないし、繰り返しもあったりするのに、さっと読んだだけではすまされない読み手を捕まえる文。短編は特に会話文に要注意。超短編は書かれている人称に注意しないと簡潔すぎてわからなくなってしまう恐れありです。

最後に超短編の中でも超超短編、Chapter IIIを紹介します。ナイフのイメージ、そして血のにおいを感じてください。

We were in a garden at Mons.  Young Buckley came in with his patrol from across the river.  The first German I saw climbed up over the garden wall.  We waited till he got one leg over and then potted him.  He had so much equipment on and looked awfully surprised and fell down into the garden.  Then three more came over further down the wall.  We shot them.  They all came just like that.

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