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2009年5月11日 (月)

本「重力ピエロ」

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)」(伊坂 幸太郎著、新潮社)

「ジョゼと虎と魚たち」は原作が先で、映画を後から観ましたが、こちらは、映画「重力ピエロ」が先。著者の伊坂幸太郎は、本の目利きたちが選ぶ本屋大賞に毎年ノミネートされています。2008年には「ゴールデンスランバー」で大賞を受賞。彼は面白いと噂には聞いていましたが、映画を観て俄然読みたくなりました。

目次をめくると一見関係のない単語が並んでいます。これがストーリーにどんな風につながってくるか訝しく思ってしまいます。例えば「ジョーダンバット」「性的人間」「トースト」「トロッコ」、「燃えるごみ」「二万八千年前」「エンジン、円陣、猿人」などなど。

そしてはじめの文は、「春が二階から落ちてきた」―映画でもこうでした。この冒頭の文で、読者はぐんと物語りに入り込むことになります。

本特有の魅力は、兄弟、春と泉水の二人が語る本の話し。本好きにはたまりません。例えば、芥川龍之介の「地獄変」、太宰治の「走れメロス」、井伏鱒二の「山椒魚」。そして極めつけが「桃太郎」の”謎の真相”。実は「桃太郎は親殺しの話だった。」と語る春の妄想が迫力ありスマートです。

スマートといえば、サクソファン奏者「ローランド・カーク」の逸話も印象に残ります。彼への泉水の賛美が、またまたカッコいいのです。

「目に見えるものが一番大事だと思っているやつにこういうのは作れない」父の言わんとすることは、薄らとではあったが、分かった。この、「軽快さ」は、外見や形式とは異なるところから発せられているのだろう。しかも、わざと無作法に振舞うようなみっともなさとも異なり、奇を衒ってもいない。言い訳や講釈、理屈や批評からもっとも遠いものに感じられた。(106ページ)

この本のテーマは、敢えて”重力”を感じないようにしようと必死で明るく振舞うほど重たい問題を抱えている家族。その文章は、ローランド・カークのような軽快さをもっているような気がします。母の辛さを、父の痛みを、春の怒りを、そして泉水の哀しみを言い訳なしで、ありったけの軽さでしのいでいこうと。

もうひとつ、映画には出てこなかった登場人物で重要な人が、黒澤という探偵もどき。こちらもなかなか渋く、フィルム・ノワールに出てくるような男の人です。彼が脇役としてピリッとお話しを締めているのも伏線として楽しみました。

映画を観て、本を読んで、めずらしくどちらを先にしても楽しめる作品に出会いました。キャストも皆さん、適役かと思います。

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コメント

コニコさんの読書会!!
私も末席でコーヒーずずっとすすりながら
皆さんのお話伺っていたい~~(妄想♪)

伊坂さんの重力ピエロは私もあわてて
読ませていただきました。
重いのに軽快。大きな山を登って
足が棒なのに爽快感を抱えたまま山を降りる
高揚感もある。
死神シリーズもそうですよね。
私もキャストはドンぴしゃ!だと思いました。
だからぜひぜひ映画がみたいー。
月曜はダンナほったらかして娘と
「ルーキーズ」試写会いってきます(でへ

投稿: mint2 | 2009年5月22日 (金) 21時02分

mint2さん、嬉しいことをいってくださる。読書会の特別メンバーとしてご参加ください。mint2さんの「ファウスト」観もお聞きしたいわ~。

ところで、伊坂氏の本は「重力ピエロ」が初めてでした。死神シリーズも面白いのですね。私も読んでみようと思います(いつになるかわからないですが…happy02

「ルーキーズ」と「重力ピエロ」の感想、楽しみにしていますね♪

投稿: コニコ | 2009年5月22日 (金) 22時12分

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» 「重力ピエロ」泣いている、笑ってる、微妙なバランス [soramove]
「重力ピエロ」★★★★ 加瀬亮 、岡田将生 、小日向文世 主演 森淳一 監督、2008年、119分 「春が二階から落ちてきた。」 「印象的な出だしで始まるのは、 ある家族の物語、 どこにでもあるようで、でも 見ていると分かる、 どの家族も唯一の物語を持っていると」 原作は読んでいない、 読もうかな思ったときには ベストセラーとなっていて 「今さら」と思ったからだ。 映画を見ていて所々に 本の印象的な書き出しのような部分を見た、 そして... [続きを読む]

受信: 2009年5月30日 (土) 11時29分

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