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2009年6月12日 (金)

「ファウスト・クラス」読書会(2)

Pap_0054 「ファウスト・クラス」読書会も2回目、いよいよ「ファウスト」の悲劇第一部に入ります。今回は「夜」から「魔女の厨」までの前半の6章を読みました。後半に比べて章の数は少ないのですが、ファウスト全体の骨格となる大事な部分です。

読書会では、まずメンバーの感想をひとりずつ言ってもらって、話しの取っ掛かりとしました。

全体に皆が共通して思ったことは、「書いてあることはさーっと読むことは出来たのだけれど、何が起こっているのか、何を言っているのか、何が言いたいのかが見えにくい」ということでした。

(写真の本は、中公文庫、手塚富雄訳の「ファウスト」。格調高い訳で有名です。)

そこで、いつものように原文に立ち返ってみるということで「夜」の最初の部分を皆で音読してみました。劇は、主役であるファウストの長い独白からはじまります。ここで、ファウストという人物が学者であり、あらゆる学問を究めつくし、錬金術にも手をだしていることがわかります。地霊を呼び出すことの出来る人です。そして、齢50歳くらいにして、学問の限界を感じ、厭世的気分になり、自殺を考えていることもわかってきます。

そうなんですよね、ファウストはおじいさんかと思いきや、設定では50歳くらいなんです。もちろん、何百年も前の50歳といったら、今の50歳よりも老成しているだろうと思いますが、同じくらいの齢なんだと、俄然親近感を覚えてきました。

毒杯をいざ飲もうとしたその瞬間に天使の合唱が聞えてきて、彼の信仰心はわずかに残るだけでしたが、とりあえず自殺を思いとどまるというのが「夜」の話。

「町の門前」では、学問の牢獄とは打って変わって、村人達の恋の鞘当、色恋の場面。そこに登場するのがファウストと弟子のワーグナー。この二人の会話では、ワーグナーが知識を追い求めるだけの人生で満足しているのに対して、ファウストが自分の中に二つの魂があるということを言っています。

「もし天と地を支配する霊がいるなら、黄金の高みから下りてきて、私を別世界へとつれていけ。せめて魔法のマントでも寄こしておくれ。それをまとって異国へ旅立ちたいじゃないか。どんな貴い衣服や王の衣よりも、魔法のマントが私には願わしい。」(69ページ)

Photo そんなファウストの気持ちを見透かすようにやってきたのが、黒いむく犬。メンバーで話題になったのが、むく犬ってどんな犬かしら?っていうことでした。毛がふさふさで小型犬というイメージ。「むく犬」で検索してみるとプーリーという種類の犬がでてきました。かっわいい♪でも、その正体はメフィストってわけなんですがね。

いよいよメフィストとファウストの丁々発止の場面、「書斎」は前半の山場です。はじめの「書斎」での、「初めに言葉ありき」(74ページ)という聖書からのことばを取り上げ、少し皆で話しました。実は、この”言葉”というもともとの意味はロゴスからきていて、神の意思、行動、力といった複雑な意味を込めた語だというのです。ファウストも迷いながらも、「初めに行為ありき」と訳し直しています。この”行為”というのは書物ばかりではなく、実体験を大切にしたいということでしょうか?言葉と本質、そこら辺のことも注目して読み進めたいと思います。

前半の「書斎」ではメフィストは契約まで持ち込むことが出来なかったのが、後半の「書斎」では、メフィストが大いにファウストの好奇心と喜び、行為への意欲を煽って魂の契約を成立させます。「とどまれ、おまえはじつに美しい―もし、そんな言葉がこの口から洩れたら、すぐさま鎖につなぐがいい。」(99ページ)の有名なセリフで固めの約束。ファウストの知識欲だけでなく、快楽と苦悩を求めるこころは彼だけにとどまらず、人間がもっている欲のモデルなのかもしれません。”みんなほしい”とのぞむこころは、現代的ともいえます。

舞台は、一気にしもじもの世界「ライプツィヒのアウエルバッハ地下酒場」へ。ここでは酒におぼれる庶民たちが描かれ、メフィストは、世の人々を皮肉くりながら、彼らを相手にからかいます。

最後の「魔女の厨」では、あやしげ猿たちと魔女の登場。そこでとうとうファウストが20歳くらいの青年に生まれ変ります。

6章の構成が面白いですね。ファウストの現状を示す牢獄のような書斎と、庶民の活き活きとしたシーンが交互に配置してあり、その庶民の場面も最初が”色気”、次が”食い気”と、人間の快楽をちゃんと描いているんです。

さてさて、物語は動き出しました。次回は第一部の終わりまで。ファウストが色恋に目覚める時です。お楽しみに。

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コメント

マーラーの交響曲8番の第2部でも、『ファウスト』が取り上げられています。ファウストを取り上げた曲は、マーラー以外にも他にもいくつかあるようですね。
 8番は私の大好きな曲の1つです。

投稿: mikarin | 2009年6月13日 (土) 21時06分

mikarinさん、マーラーはほとんど聴いたことがないので、ちょっと借りて聴いてみますね。8番ってどんな曲かしら、楽しみです。

今はシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」を聴いているんですよ。オペラもあるそうなんで、いつか観たいわ♪
いろいろな芸術家が「ファウスト」にインスピレーションを得て作品を作っているのが面白いですね。上の本の表紙もレンブラントの版画の構図です。そして手塚治虫もインスピレーションをビンビン得た一人。いや~、ホント「ファウスト」のセリフではないですが、”芸術は長し、人生は短し”、文学も音楽も絵も奥深いですよね。

投稿: コニコ | 2009年6月13日 (土) 23時07分

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