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2009年6月 2日 (火)

「小説作法ABC」

小説作法ABC (新潮選書)

 「君が壊れてしまう前に」を気に入ったので、新聞に書評が出ていた島田雅彦の「小説作法ABC (新潮選書)」を読んでみた。

アメリカではプロの小説家が大学で「Creative Writing」というクラスをもって、「書き方」なるものを教えていることが伝統としてあるが、日本ではあまりみられない。この本は、島田雅彦が2007年に法政大学で行なった講義をベースにしているということだ。

小説の書き方を知ることで、読み方も違った角度から読めるかもしれない。信頼できる作り手が明かす技を知ることで、より深くその作り手の作品を理解できるはずだという思いで読み進んだ。

思ったよりも具体的で楽しい。例に挙がっている作家もドストエフスキーから舞城王太郎、川上弘美、大江健三郎と多彩極まりない。自らの作品も時に批評の対象としているのも面白い。

具体的な書き方は0章「はじめに」から始まり11章まである。特に興味深かったのが、8章の「小説内を流れる時間」。その章の見出し(B)「今この瞬間だけの世界」では、臨場感について書かれている。例に挙げられているのは、村上龍の「半島を出でよ」。

出来事の状況中継をやらせたら、村上龍の右に出る者はいないでしょう。同じ村上でも、春樹は回想、龍は実況です。回想は老人になってもできるが、実況はフットワークが命です。だから、春樹は若くして老人小説を書き、龍は老いても青春小説を書くのです。(182ページ)

なかなか辛口だ。ばっさりと春樹を切っている。そういう見方もあるのだろうかと考えさせられる。

同じ章、(C)「記憶喪失の人物を描くには」では、志賀直哉の「暗夜行路」を紹介している。余談で、韓流ドラマに記憶喪失というテーマがなぜよく出てくるかという問いに、「韓国には徴兵制があるから」といっているのも説得力がある。(D)「どの時点から出来事を語るのか」ではドストエフスキーの「罪と罰」を紹介し、主人公が時間とともに人間的に変わっていくという点を語っている。

こうして1つの章をみてみるだけでも、玉手箱のようにいろいろな書き方を楽しめる。

最後に、島田雅彦が紹介するとっておきの教えを―作家をめざす、五つの動機。

①ヒーローになりたい

②女にモテたい/男に愛されたい

③遊んで暮らしたい

④愚行の研究

⑤恨みを晴らす

なるほど、動機は極めて単純な方が爆発的なエネルギーを放つのかもしれない。

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