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2009年8月30日 (日)

「無伴奏」

無伴奏 (新潮文庫)

先日はドイツの悲恋を扱った物語でしたが、今日は日本の小説「無伴奏 (新潮文庫)」」について書いてみたいと思います。

小池真理子さんの小説はいつか読みたいと思いながら、なんとなく手に取るのが面映い気がしていました。でも、小川洋子さんのラジオでこの本が取り上げられて、すっかり読む気満々に。まずはこのタイトルと主人公の響子という名前に惹かれてしまいます。

仙台を舞台に高校生の響子が美しい青年渉(わたる)と出逢い、恋に落ちていく話です。

といってしまえば、単純ですが、いえいえ、そこには深くて暗い闇の部分が隠されていて、後半はサスペンス小説のようなスリルと、そして哀惜の想いがありました。

読みながら、小説に出てくる音楽が心地の良いBGMとなり、響子、渉、エマ、祐之介の人間模様を浮き彫りにしていきます。出逢いのシーンに流れるパッヘルベルの「カノン」、エマの好きなローリング・ストーンズの「サティスファクション」、響子の18歳の誕生日に渉から贈られるチャイコフスキーの「悲愴」、「無伴奏」で最後にエマと祐ノ介に会った時に流れていたアルビノーニの「アダージョ」、それぞれの想いをのせて音楽は奏でられ、やがてそのメロディーに導かれるかのように悲劇へと向かっていく4人の恋人たち。

その結末を暗示するかのように響子と渉の出逢いのシーンには、響子だけでなく読者も忘れられない悲しさがただよいます。喫茶「無伴奏」で、響子は渉の印象をこう記します。

ぞっとするほど冷たく美しい顔だった。不幸な顔…と言ってもいい。なめらかな皮膚、オールバックに撫でつけられた茶色の髪、ナイフで切り裂いただけのように見える薄い唇。その顔には、人がおよそ表情と呼ぶものすべて見つけることができなかった。(63ページ)

終章で渉のお姉さん、勢津子との会話の時に流れるダイアナ・ロスとシュープリームスの「ラブ・チャイルド」は、響子とエマの若き日の想いを思い出させます。

余韻の残るラブ・ストーリーでした。

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