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2009年9月 4日 (金)

「神話がわたしたちに語ること」(A Short History of Myth)

世界の神話 神話がわたしたちに語ること

この秋は、”読書の頂点”(昨日の「多読術」レビューを参考に)といわれる全集読書を力まずやってみようかなという気になっています。

思い浮かんだのが島田雅彦さんが「小説作法ABC」の中で薦めていた全集「新・世界の神話」(角川書店)です。これは世界32カ国が参加する共同プロジェクトで、33年かけて100冊刊行の予定とか。はたして全集完結まで生きていられるかどうかはわかりませんが、まずは第1弾に当たる「世界の神話 神話がわたしたちに語ること」(カレン・アームストロング著)を読んでみました。

この本を読む前に、マンガで「ギリシア神話」をさらっていたのが大変役に立ちました。

「なぜ人は神話を必要としたか?」―ギリシア神話の中では、数多くの悲劇や闘いを神の話として創造し、人間が生きていく苦しみや哀しみに折り合いをつけていく方法を見出しています。「パンドラの匣」や「メドゥサ」の話にしても、人間の弱さや嫉妬というものが描かれ、人間本来の姿を知る助けにもなっていたことがわかります。

そんな神話の歴史を概説したのがこの「神話がわたしたちに語ること」です。旧石器、新石器時代に大いに切望されていた神話が、文明の始まりとともにその力を失っていったことが述べられています。やがて「ロゴス」(神話と対極にあり、実利的なもの)一辺倒の世界になり、「枢軸時代(紀元前800年~紀元前200年)、そしてそれ以降(紀元前200年~西暦1500年)」までロゴスと神話の共存が困難であったことが説得力をもって書かれていました。

そして近代、現代において小説家や画家が神話の作者と同じ意識レベルで創作を始めていることが明らかにされています。コンラッドの「闇の奥」やトマス・マンの「魔の山」などがその一例として挙げられていました。

ラストの確固たる小説への信頼が、この全集シリーズの全体の開会宣言のようでやる気、読む気がでてきます。

その開会宣言を引用し、今まで刊行されたシリーズの本を紹介して今日は終わりにしたいと思います。

小説は、真摯な態度で書かれたものであれば、また、読者が真摯な態度で読むのであれば、神話や優れた芸術作品と同様に、イニシエーションになる。つまり、人生のひとつの局面、ひとつの精神状態から、別の局面、別の精神状態へと、苦しい通過儀礼を果たすのを助けてくれる。小説は、神話のように、世界をこれまでとはちがった目で見ることを教えてくれる。自分自身の心をのぞきこみ、利己心を超越した視点で世界を見る方法を示してくれる。宗教の指導者が神話を教える能力を失ってしまったとしても、おそらく画家や作家がこうした聖職者の役割を引き受け、傷つき途方に暮れたわれわれの世界に新たな洞察をもたらしてくれるだろう。(155ページ)

≪いままで刊行された「新・世界の神話」全集≫

神話がわたしたちに語ること 新・世界の神話

カレン・アームストロング著、武舎 るみ訳(2005年11月30日 1470円)

永遠を背負う男 新・世界の神話

ジャネット・ウィンターソン著、小川 高義訳(2005年11月30日 1470円)

ペネロピアド 新・世界の神話

マーガレット・アトウッド著、鴻巣 友季子訳(2005年11月30日 1575円)

ライオンの蜂蜜 新・世界の神話

デイヴィッド・グロスマン著、母袋 夏生訳(2006年7月31日 1680円)

恐怖の兜 新・世界の神話

ヴィクトル・ペレーヴィン著、中村 唯史訳(2006年11月30日 2100円)

碧奴 涙の女 新・世界の神話

蘇 童著、 飯塚 容訳(2008年3月27日 2205円)

女神記 新・世界の神話

桐野 夏生著(2008年11月28日 1470円)

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