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2009年9月 8日 (火)

「ファウスト・クラス」読書会(4)

ファウスト〈第2部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

 今日は久々の「ファウスト・クラス」。8月は夏休みだったので、今回で4回目です。いよいよ第二部に入ります。テキストは「ファウスト〈第2部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)」(ヨハーン・ヴォルフガング ゲーテ著、池内紀訳)。

第一部でメフィストがファウストと魂の契約をした後、ファウストにこれからどこに行くかをたずねると、メフィストはこう答えています。

しもじもの世界を廻ってから上(かみ)の世界へ出向くとしよう。(「ファウスト 第一部 116ページ)

第一部は”しもじも”つまり「平民の世界」を舞台に繰り広げられる話、そして第二部は”上の世界”つまり「王侯貴族のつくる宮廷社会」を舞台に綴られる話となります。

今回は、マルガレーテから逃げるように立ち去った傷心のファウストが眠りから覚めるところから、世界一の美女へレナを略奪しようと逸るファウストが爆発で倒れる第一幕までを取り上げました。

この部分の注目すべきところは、「大広間」で催される仮装舞踏会のスケールの壮大さと、「庭園」で展開される錬金術の魔法の普遍性でしょう。

特に仮装舞踏会の登場人物の多さと、その人たちがどんなアレゴリー(寓意)なのかを考えるだけでも頭が混乱してきます。正直1回読んで理解するのはなかなか無理があり、2回読んでも解説なしでは手がかりをつかめず・・・登山でいえば3合目くらいしか登れず、読書会のメンバーと「難解だ~」と言い合っていました。ただ、同じく「ファウスト悲劇第二部(上)」手塚富雄訳の解説には、仮装した人のうち、たとえばプルートスはファウストが演じているとか、毒舌屋はメフィストがやっているとかが示唆してあり、理解のヒントになりました。ここで登場するギリシア神話の神々は人間のさまざまな側面を映し出し、皇帝も”大いなるパンの神”に扮しています。

面白いのは、メフィストという悪魔がキリスト教の産物でありながら、この一幕にはギリシア神話の神々や妖精たちが多く登場し、世界と共存していることです。もちろん、最後の方に登場するパリスとヘレナはギリシア神話、トロイの木馬のお話で重要な登場人物です。(あれ、ヘレナは、大神ゼウスが父で、母は人間のレダなので、ハーフ・ブロッド・プリンセスってことですね、どっかで聞いたな~)

先日ご紹介した「神話がわたしたちに語ること」よると、ゲーテが「ファウスト」を書いた19世紀は歴史的に「ロゴス」(能率主義ともいっていいと思いますが)の台頭で、神話が死んでいった時期だと述べられています。確かにゲーテは、「大広間」でたくさんの神話の神々を登場させながら、一方で錬金術のように貨幣というの実利主義に最もふさわしいものを「庭園」の中で紹介しているのです。ゲーテはその時代の奥行きを書き込んでいるのでしょう。この物語の懐の大きさには驚かされます。

そうそう、「庭園」の中で、皇帝が臣下たちにあふれるお札を与え、その用途をいってみろと問うところは、まさに今も繰り返される普遍的な質問ですね。もし宝くじが当たったら?と同じです。

おもしろおかしく、おもいっきり遊びます。

なじみの女に金鎖と指輪をかってやります。

抵当に入れている土地を取りもどします。(85ページ)

などなど。あなたなら、どう答えるか?考えるのも一興です。

さてさて、次回は第二幕。予定ではあと3回で今年中にメンバー皆で読了できればと考えています。

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