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2009年9月12日 (土)

「RURIKO」

RURIKO

 大輪の花のような浅丘ルリ子の顔が印象的な表紙に誘われ、「RURIKO」(林 真理子著)を一気読みしました。

久しぶりに読む林真理子。さずがベテラン、筆致に無駄がないです。”輝ける昭和のスター達”を描きながら、ルリ子(信子)の女優になる運命を巧妙に紡いでいき、彼女がその運命を受け入れて生き抜く姿をすがすがしく書かれています。

美空ひばりや石原裕次郎といった昭和の大スター達が活き活きと描かれ、わたしには嬉しい限りですが、ただこんなに実名が出てきていいの?と思ってしまいました。「本書は著者の取材に基づいて、実在の人物をモデルに書かれたフィクションです。」とは断ってあっても、歴史小説のように皆、亡くなっているわけではないのでちょっとびっくりです。

それはさておき、全般を通して、タイトルロールのルリ子を中心に、日本映画の終戦直前の黎明期から黄金期、テレビが台頭する衰退期と移り変わっていった激動の時代を綴っています。映画好きのわたしには、映画のメイキングの様子も楽しく、これは本当にページターナーでした。

そしてクライマックス。ひばりのこころの友になった信子(ルリ子)が東京ドームのこけら落としコンサートでラストの曲、「人生一路」を聴く場面ではすっかり感情移入してしまいました。なぜなら、わたしもこの、伝説のコンサートをひばり好きの母と観に行ったからです。舞台からはるか遠い席だったのに、その一挙一動が波のように伝わってくる感覚を今でも思い出します。このシーンは圧巻です。

 力強くこの歌を歌い終わった後、ひばりは花道を歩き始める。どこまでも続くかと思われるほど長い花道を、手を上げ、人々の歓声にこたえながら、ひばりはゆっくりと去っていく。この姿はスターであることの恍惚にあふれている。たとえ私生活でどれほどつらく悲しいことがあっても、今、この時間を生きていればすべてのことは帳消しになる、そんな表情であった。笑顔というのではない。静かに唇が上がっている。そして人々の歓声にこたえる。やはり女神の顔だ。

「よかったね、和枝ちゃん」

 いつのまにか信子も泣いていた。不意に昨年この世を去った裕次郎の顔がうかぶ。ああ、スターと呼ばれる人は、もはやふつうの人間ではないのだと思う。こうしたひとときのために、神からつらい宿命を背負わされる。この世では決して幸福になれない人。それが真のスターだ。(323ページ)

このシーンからエンディングまで6ページは、昭和という時代を走馬灯のように感じさせてくれたこころに残る文章でした。

日活隆盛期を知る中高年にはたまらない本だと思います。

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