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2009年10月 9日 (金)

「ドーン DAWN」

ドーン

平野啓一郎の最新作「ドーン」(講談社)を読んでみました。お顔はお馴染みなのですが、小説を読むのははじめてです。

このタイトルを聞いた時、擬音語の”ドーンといってみよう”のドーンだと思ったら、Dawnだったんですね。本の表紙を見てわかりました。あいかわらず早とちりのコニコです。

さて、あらすじは・・・

時は未来、2033年。火星に向けて飛び立った宇宙船「DAWN」の乗組員6人は、2年半という年月の後、任務を終えて地球に戻ってくる。しかし歴史的偉業を果たした6人の一人、日本人の明日人(あすと)は、その任務の中で起きた重大な事件の秘密を抱え苦しむことになる。彼の住むアメリカでは次期大統領選を前にして、その事件が大きな政治的鍵を握ることになり・・・

という具合に、未来SF小説であり、サスペンスものであり、しかも社会派小説でもありという多面性をもったお話でした。493ページという長さで、まさに量と質ともに読み応えありです。

ひとことで言うのはむずかしいのですが、この小説のキーワードは”閉塞感の打破”なのではと感じました。主人公の明日人(あすと)とその妻、今日子は何年か前に2人の間に出来た子ども、太陽を幼くして天災で亡くしてしまいます。その苦しみから立ち直れずにいる夫婦の間の閉塞感がベースにあります。さらに明日人は、宇宙船ドーンの中での船内の物理的な狭さだけでなく、乗組員の人間関係に閉塞感を感じています。そして、アメリカ社会が抱える東アフリカ戦争の泥沼化という閉塞感。こういったもろもろの前に進めない状態を、生真面目すぎるくらい綿密に書き込んでいます。やがて大団円で夜がうっすらと明けていくような光が見えてくるという筆致に、そんなに遠くない未来の希望を見た思いがしました。

途中、人間関係が複雑になってどうなるかと思いましたが、なんとか最後の光をみられてよかったです。平野さんの文体に慣れるまで少し時間がかかりましたが、嫌いではないスタイル。「決壊」もいつか読んでみたいと思います。

flairコチラのサイトで平野啓一郎の「ドーン」紹介動画を見られます。

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