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2009年10月 1日 (木)

「世界はこんなに豊かで人は優しい」

世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい (ちくま文庫)

以前にみたNHKの番組ETV「21世紀のドストエフスキー~テロの時代を読み解く~」の中で森達也さんという方がとても印象に残っていました。その時はじめてオウム真理教の映画「A」というドキュメンタリーがあって、その映画を撮った方が森さんだということを知りました。

映画「A」のテーマは、視点を変えて世界を見てみる。オウム信者の側から今の日本の社会を考えてみるというもの。

まだ未見ですが、いつか観たいと思っていたら、こんな本と出会いました。「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい (ちくま文庫)」(森達也著)

この本は、いかに映画「A」が日本で特にマスコミに無視され続けてきたか、そしていかに海外で評価され続けてきたがを語っていました。その苦しみと、だからこそこの映画を作った意義があるという信念が伝わってきて深く考えさせられます。森さんはオウムのサリン事件が起こってから信者たちと接すれば接するほどある思いを強くしたと書いています。

悪意ではない。むしろ善意なのだ。

自らの欲望や利益のために、人は人を大量には殺せない。せいぜい数人が限度だろう。人はそれほどには強く作られていない。

でも正義や善意や大義を燃料にするとき、そして愛する人を守ろうと思ったとき、人は内実が変わらないままにとても残虐になれる。多くの人を摩擦なく殺せるようになる。

だから本当に警戒すべきは、外なる悪ではなくて内なる善なのだ。(365ページ)

そして、もう一点。常々思っていたドキュメンタリーを撮ることのむずかしさが、この本の中できちんとした言葉で表されていました。わたしは、生身の人間を撮ることは、そこにどうしても人を傷つける要素を孕んでいることは感じていましたが、森さんの覚悟を読むとそれがそこまで激しいものかと思ってしまいます。

(ドキュメンタリーを撮るということは)鬼畜の所業なのだと時おり思うことがある。加害は他者にだけでなく自己へも及ぶ。噛み締めた牙の毒が自身に回った蛇のように、苦痛でのた打ち回ることもある。自業自得なのだ。誰も傷つけることなくドキュメンタリーを撮り続けることなど、不可能なのだと僕は知っている。(103ページ)

是非森さんの映画「A」、そして一時はこの本のタイトルをテーマにしようとした映画「A2」を観てみたいと思います。

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