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2009年10月11日 (日)

「やんごとなき読者」(The Uncommon Reader)

やんごとなき読者

この連休にmint2さんお薦めの 「やんごとなき読者」(アラン ベネット著、白水社)を読もうと、昼頃から読み始め、一気にティータイムまでノンストップの読書。いや~、面白かったです。

時は現代、舞台はイギリス。やんごとなき読者とはズバリ、エリザベス2世女王陛下のこと。陛下が、宮殿内にやってきている移動図書館に気づいたところからお話ははじまり、はじまり~。女王が本を借り始め、いつのまにか公務に支障が出るほどの読書家になってしまうという展開。陛下のまわりの戸惑い、あるいは顰蹙を描きながらもピリッと風刺の効いたユーモアが極上の味を出しています。

何よりも女王が老齢にして、活き活きと読書の楽しみを通して成長していく姿に引き込まれます。高貴な育ちだけにさまざまな人生を知ることなく過ごしてきた日々を、まるで必死に取りもどすかのように本をむさぼり読む女王は、”読書”を通して感受性豊かになり、人の気持ちを慮るようになっていきます。

彼女が本に取り憑かれていく様子はこんな言葉からも伺えます。

 読書の魅力とは、分け隔てをしない点にあるのではないかと女王は考えた。文学にはどこか高尚なところがある。本は読者がだれであるかも、人がそれを読むかどうかも気にしない。すべての読者は、彼女も含めて平等である。文学とはひとつの共和国なのだと女王は思った。(中略)本は何者にも服従しない。それは無名の人間になれる経験、人々と共有できるもの、共同のものだ。ふつうの人と異なる生活を送ってきた女王は、いま自分がそうしたものを渇望していることを知った。本のページの中に入れば、彼女は誰からも気づかれない存在になれる。(40ページ)

しだいに読む本のレパートリーもふえていき、それまで鬱陶しいと思っていた文体―例えばヘンリー・ジェイムズなどにも耳を傾けるようになった女王。愉快なのは多くの人に薦められたオースティンの本を女王は最初、”ひどく読みづらいもの”だと思えたというところ。その理由が、「ジェイン・オースティンの真髄は微細な社会的区別の描写にあるが、女王はその特異な立場ゆえにその区別がうまく把握できなかったのである」(96ページ)からというのです。女王はだんだんと読書で文学の筋肉を鍛えることによって、オースティンの登場人物の個性や魅力が理解できたというのも大きくうなづけました。

ラストにはビックリするような隠し球もあり、休日の午後の粋な読書にはピッタリです。。巻末の新井潤美さんの「解説 知的でないことの重要性」はイギリス人への鋭い洞察力あるすばらしい文章でした。これはいつか原書で読みたい本ですね

本の中で、女王陛下が自分自身のことをオプシマス opsimath(晩学の徒 年をとってから学びはじめる人)と呼ぶところがありますが、まさにわたしもオプシマスだと感じながら、なにやらやる気が出てくる素敵な本でした。

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コメント

 こんにちは。
 あちこちで話題になっている本ですよね!うー、やっぱり面白そう!ぜひ私も読んでみたいです。英語で読みたいですが、自信がないし、なにせペーパーバックの積読ばかりになってきているので、これは図書館で翻訳を借りて読もうかなあ・・・

投稿: 点子 | 2009年10月11日 (日) 23時41分

点子さん、こんばんは。翻訳ならば電車の中などで読めちゃうくらい、面白くて読みやすいですよ。英語で読みたい誘惑に駆られるのはわかりますが、翻訳でもこの話の楽しさは十分伝わってきます。
この著者本人が朗読しているCDもあるそうで、それもちょっと気になっています。超ブリティッシュなのかしら?

投稿: コニコ | 2009年10月12日 (月) 20時45分

こんにちは!おひさしぶりです!
この本おもしろそうですね!
ぜひ読んでみたいです(^^)

ところで、ついにうちにJ:COMが導入されて、
いろいろなチャンネルがみれるようになりました!

先月はLala TV で
「エマ(カナダ版?・・・とにかくイギリス版ではなかったです)」と
「ノーサンガー・アベイ」があったので
すっごくうれしかったです!
コニコさんはご覧になられました?

投稿: ひらもこ♪ | 2009年11月 4日 (水) 23時18分

ひらもこ♪さん、本当にお久しぶりです。お元気ですか~?
この本、お気に召すと思いますよ。是非お読みになって感想を聞かせてくださいね。

ところで、LaLaTVがみられるようになったなんて羨ましいです。わたしの方は衛星放送も見られず、グスン。ご覧になった「エマ」は2009年BBC版じゃないかと思うのですが、違うかしら。エマ役がRomola Garai(http://www.imdb.com/name/nm0304801/)という人のでは?まだわたしは最初の方しか見ていないのですが、また感想を書きますね。
「ノーサンガー・アベイ」は主役の子がかわいく、フレッシュな感じで好きです。

まあ、オースティンを話題にすると止まりませんねhappy01今日はこの辺で。

投稿: コニコ | 2009年11月 5日 (木) 16時12分

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