« ランラン蘭、らん展 | トップページ | 映画「赤と黒」 »

2009年12月20日 (日)

「グレート・ギャツビー」読書会(12)

毎月の読書会も今年の分をすべて終わりました。毎回充実した会が出来たことを本当にメンバーに感謝しています。2009年、読書会のおおとりは「グレート・ギャツビー」。

今回は、ギャツビーのパーティーにトムとデイジーがやってきて、帰っていくところまでの7ページ弱を読みました。

パーティー場面はこれまでも何回かでてくるのですが、このシーンで際立っているのがEast EggとWest Eggの対比です。West Eggの価値観や雰囲気に慣れてきたニックが、このパーティーを回想する時に真っ先に思い出したのが“an unpleasantness in the air”―不快感だったのです。そしてデイジーの目を通して、ニックがあらためてWest Eggのものごとをみて憂鬱になるということも、そこにはEast Eggの視点が入っていることがわかります。

East Eggが名家のお金持ちで、West Eggが成り上がりの成金という単純な対比だけでなく、ここではWest Eggが徹底して幻として描かれているのが興味深いところ。特にデイジーが気にしている映画スターと監督の描き方は、映画そのものが実体のないものであるように現実の人間そのものも幻のように書かれています。

Gatsby indicated a gorgeous, scarcely human orchid of a woman who sat in state under a white plum tree.  Tom and Daisy stared, with that peculiarly unreal feeling that accompanies the recognition of a hitherto ghostly celebrity of the movies.

ギャツビーは白いスモモの木の下にきりっとした様子で座っている、まことにあでやかな、人間というよりはむしろ蘭の花を思わせる女性を指し示した。トムとデイジーは黙って見とれていたその女性が、それまでは一種架空の存在でしかなかった高名な映画女優であることに気づいて、現実がずれてしまったような不思議な感覚にとらわれていたのだ。(村上春樹訳170ページ)

白いプラムの木の下に、もはや人間ではなく豪華な蘭の花になったような美人が堂々と座しているのだった。これにはトムもデイジーも目を丸くした。まさか、こんなところにいるとは思わなかった。いままで生身の人間とも見えなかった映画界のスター女優が来ていたのだ。(小川高義訳170ページ)

ギャツビーが毎夜ふくらませていった幻想の世界がそのままパーティーの一場面になったような、現実のものでないようなWest Eggのパーティー。そして作り物のメッキのような派手なパーティーにデイジーは感情的に受け入れられないものを感じたようです。

トムとデイジーは性格的には共通するものがないように見えて、実は成り上がり者を嫌悪するようなスノビッシュなところがとても似ている似たもの夫婦という気もしてきます。

self-made manであるギャツビーがWest Eggを代表し、ある意味アメリカを象徴しているのに対して、トムは生まれながらにしてポロを趣味とするような名家出でEast Eggを代表し、旧世界(ヨーロッパ的なもの)を示唆するようなところも少し伺えます。

トムとデイジーが帰ったあと、真夜中のギャツビーの屋敷から聞えてくるメロディーは限りなく甘いロマンスを想わせ、やがて聴いている人を幻想の世界に導くようです。

次回は、その後のニックとギャツビーの会話から。

来年も、ギャツビーの読書会は続きます。

P.S. このパーティーで登場するシヴェット先生は実は4章第3段落で「去年の夏、メイン州で溺れて死んだ」という記述があります。この酒好きの先生が酔っ払いのべディカー嬢に"Speak for yourself!"と言われても仕方ありませんね。フィッツジェラルドのちょっとしたジョークを発見。

|

« ランラン蘭、らん展 | トップページ | 映画「赤と黒」 »

原書でキャンペーン」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

英米文学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/114487/32598719

この記事へのトラックバック一覧です: 「グレート・ギャツビー」読書会(12):

« ランラン蘭、らん展 | トップページ | 映画「赤と黒」 »