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2009年12月 7日 (月)

「ファウスト・クラス」読書会(6)

Photo 11月の読書会、第二部第三幕を読んだ報告がすっかり遅くなってしまいました。

場所は全幕と同じギリシア、時はトロイ戦争が終わった頃。幕開けから絶世の美女といわれたヘレナの登場です。

これまでファウストが恋焦がれたヘレナですが、お姿ばかりで、とんと彼女のことばを聞いたことがありませんでした。この幕はへレナの舞台といっていいでしょう。

はたして第一幕でファウストが黄泉の国から呼び出したヘレナは、“現実と幻像がせめぎ合って”(「ファウスト第二部 池内紀訳114ページ)生きているのやら、幻やらわからずファストのもとへ行くことになります。もちろん、お膳立ては全部メフィストが整えていました。それも世に醜いことで有名なギリシア神話のポルキュアス(グライアイとも呼ばれる)に化けてヘレナに近づくといった懲りよう。

このポルキュアスに化けるというくだりは、第二幕の古代ワルブルギスの夜 「ペネイオス川の上流」の最後に出てくるのですが、さりげなく書いてあるので気がつかないで読み飛ばしてしまうところ。今回は復習のつもりでその部分も読み返しました。メフィストのお茶目振りが面白い(同上195ページ)

メフィスト(ポルキュアスの横顔をつくって) これでこの身は混沌の倅ってわけだ!
ポルキュアス わたしたちはその娘。
メフィスト 男女両性なんぞとひやかされそうだ!
ポルキュアス 新しく生まれ変った三人娘ね。目も二つ、歯も二本ある。
メフィスト こっそり身を隠しておこう。この姿を見たら地獄の悪魔もぶったまげるぜ。 (退場)

第三幕ではゲーテが、古代ギリシアのことを認めつつ、ドイツの良さを誇るところが何箇所かみられます。例えば、ポルキュアスに化けたメフィストが、ヘレナに薦める“北方の高地を治めるもの”(つまりファウストのことなのだが)を「大胆不敵で、いいからだをしている。ものわかりがいい。ギリシア人にはめったにない特質だね。」といったり、砦のことを「こちらでは巨人のキュクロプスがてんでんばらばらに大石を積み上げただけだが、あちらでは縦横ぴたりと揃っている。」といったりしています。

さらに塔守りリンコイスが口上を述べるのを聞いたヘレナが、その語りに感じ入るというシーンも、ドイツ語の詩が古代ギリシアの詩にない押韻を踏んだ詩になっていることを示唆しています。

ヘレナに会ったファウストは、幸せの楽園アルカディアを夢見ていますが、これが西洋の幸せの原風景なのかと感じました。牧歌的な風景が空想できます。

この幕の後半は、ちょっと強引な展開。ヘレナとファウストが結ばれてオイフォリオンという男の子が生まれています。その子がイカロスのように高く舞い飛び、墜ちてしまうとあっけなく消えてしまいます。この子どもが、ゲーテが贔屓にしていた詩人バイロンを暗示したものだということを解説で知って、このシーンは一種のバイロンへのオマージュだったとわかりました。

今は絶版となっている手塚富雄訳の「ファウスト 悲劇第二部(下)」の表紙は、ウィルヘルム・フォン・カウルバッハ画の「ファウスト、ヘレナ、オイフォリオン」。イメージとしてオイフォリオンは全く天使のようですね。この天使のような、でも死ぬ運命をもつオイフォリオンは、空かr墜ちて暗闇の国から母を呼び求めます。それに呼応して、母ヘレナはファウストと別れ、冥界へと旅立っていくわけです。ヘレナの肉体は消え、後に残った衣服とヴェールをかき抱くと“ヘレナの衣服が雲に変わり、ファウストをつつみこむ。高みに持ち上げ、運び去る”と書いてあります。はたしてファウストが運び去られたところはどこなのでしょうか?

次回は「ファウスト」読書会、最終回で第四・五・幕を読みます。

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