« Twofers | トップページ | 映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria) »

2010年1月31日 (日)

原書「Nocturnes」

Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall

去年からずっと読みたいと思っていて読みはぐれていたカズオ・イシグロの短篇集を読了しました。

とっても読みやすい英語で一気に読めるので、速読にも適しているかもしれません。

Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall

著者:Kazuo Ishiguro
販売元:Faber and Faber
Amazon.co.jpで詳細を確認する

タイトルの「Nocturnes」は“夜想曲”。そして副題の「Five Stories of Music and Nightfall」は“音楽と夕暮れをめぐる5つの物語”。これだけでロマンチックな物語を勝手に想像していました。そういえば、カズオ・イシグロってミュージシャンになりたかった時期もあったんですよね。

5つのストーリーのタイトルをみて、気になる音楽家そのものズバリの“Cellists”から読み始め、下から順にたどっていき、最初の“Crooner”を最後に読みました。

Crooner    
Come Rain or Come Shine
Malvern Hills
Nocturne
Cellists

それぞれが独立した短篇ではありましたが、ゆるやかにつながっているんですね。短篇集を読む時は、わたしは最初から読まずにランダムに読んだりするのですが、自分では今回の読み方が結構気に入っています。

“Cellists”の舞台はイタリアのヴェニス。語り手は街中にあるピアザ・カフェのバンド・メンバー。ちょっと古くて恐縮ですが、キャサリーン・ヘップバーン主演映画「旅情」に出てくるようなカフェですよね、きっと。雰囲気はこんな感じ。

若いチェリストがアメリカ女性と出逢い、彼はチェロを絶賛され、レッスンを受けていくうちに変わっていく様子を描いた話。でも、彼の見出された音楽の才能はどうなったのか…。哀切なメロディーが残ります。

日常とは別の空間に彷徨い、異国の風に吹かれるような短篇でした。そして“Crooner”も同じヴェニスが舞台。これがまた切ない話。

“Come Rain or Come Shine”は、少しレイモンド・カーヴァーの短篇に似ているかなっと思いました。破綻した夫婦のギシギシしたざらつき感や衝動性みたいなものがトーンとしてあって、そこがカーヴァーっぽかったですが、最後に音楽に戻っていく感じは違っていましたね。

5つの中でどれが好きかといわれると、表題作の“Nocturne”でしょうか。このお話はちょっとサスペンスっぽいところもあり、先がどうなるかドキドキでした。ちょっとだけさわりをいうと、

・・・才能はあるけれど、“loser ugly”(負け犬のように醜い)のサックスフォン奏者が、ビッグになるために整形手術をうけることになる。そして術後、回復するまで泊まっていたホテルでこれまた整形手術を受けたセレブと隣り合わせになる。2人はまだ回復期なため包帯を巻いたまま何回か会い・・・

この話は“Crooner”と関連していて両方を読むとお互いの話が響き合って、余韻を残すものでした。

こういう粋な短篇集を書けるのって、さすがカズオ・イシグロです。才能、名声、うつろいゆく愛情が夜の静寂に奏でられ、しみじみとした想いになりました。

因みに翻訳はコチラ↓

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

著者:カズオ・イシグロ
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« Twofers | トップページ | 映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria) »

原書でキャンペーン」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

英米文学」カテゴリの記事

コメント

コニコさん
こんばんは。なるほどそんな順番で読まれたのですねー。私もランダムに読むときもあるんですが
たいてい順番に読みます。どれもそれぞれの味わいがあってよかったですよね。でも私的には、もうちょっと「イシグロ節」がはっきりしてるほうが好きかなあ・・・そうそう私はレイモンドカ-ヴアーは読んだことがないんです。面白いですか?
いえ、それより英語は読みやすいですか?また教えてくださいね。

投稿: 点子 | 2010年2月 2日 (火) 21時40分

点子さん、やっと読みました~。去年からずっと読む読むといいながら、すっかり狼少年になっていたので、読めてホッとしました。

こういう短篇連作って好きなんです。実は。点子さんはどの短篇がベストでしたか?
そうそう、カーヴァーはもしかしたら点子さん好みではないかも?でも、短篇の“Cathedral"はどんな感想をお持ちになるかちょっとお聞きしたい気もします。英語もこの短篇は読みやすいですhappy01

投稿: コニコ | 2010年2月 2日 (火) 23時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/114487/33197904

この記事へのトラックバック一覧です: 原書「Nocturnes」:

« Twofers | トップページ | 映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria) »