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2010年3月11日 (木)

日仏女性フォーラム「女たちのダイアログ―私は見つめる、書く」

3月7日、日曜の東京は朝から雨の降る憂鬱な天候でしたが、早起きして大手町にある日経ホールまで行ってきました。日経新聞社主催の、“女たち”が書くことについて語るフォーラム。いまさら女性作家と冠を付けるのも大仰なとは思いましたが参加する作家に惹かれて、いそいそと聴きに行ったわけです。

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正直、恥ずかしながら参加されたフランスを代表する作家たちは一人も存じませんし、一冊も読んだことがないのですが、 日本サイドの作家たちはぜひお話を聴いてみたい人ばかり。特に生の小川洋子さんのお話を聴けるとあって、ウキウキ。早めに行ったかいあって、前から3列目の特等席に陣取りました。

最初のセッションがはじまったのが10時半。それぞれ作家が自作を朗読してから各テーマに沿ってお話をしていくスタイル。1番手のテーマは「愛すること、生きること」。荻野アンナさんのことはほとんど知らないのですが、太陽のように明るくてほとんどセッションの相方シャンタル・トマさんを置いてきぼりにして暴走。2人の話もかみ合わず、いやはや夜までのセッションがどうなることかと心配になりました。

2番手は、「男と女の新しい関係」をテーマに、金原ひとみVSクリスティーヌ・アンゴーの対談。金原ひとみさんは「TRIP TRAP」を朗読。2人のお話は、より個人的な母娘体験から、社会が求める“女性性”に及び、フランスと日本の社会背景の違いと類似を語る面白い話になっていきました。特にアンゴーさんが、フランスでは社会的に大文字の女性が“永遠の女性性”を表し、実際には存在しないイメージを求められているといったことが印象的でした。実像が個人個人でどうであれ、やっぱり枠にはまった求められるイメージというのがフランスでもきっちりあるのは同じなんですね。2人とも“書く”という行為に真摯に向き合っていて、アンゴーさんの言った「書くことは聴くこと」、金原さんの「自分の書けることは限られているのでそれを書く」という言葉が誠実な姿で、聴く方も初心にかえるような新たな気持ちになれました。

そして第3セッションが「国籍、国境を越える女性の生き方」と題し、ファトゥ・ディオムVS楊逸の対談。朗読はディオムさんが日本語にも翻訳されている「大西洋の海草のように」をジェスチャーもまじえて朗々と語ったのに対して、楊さんが「すき・やき」をシャイな感じで朗読してくれました。セネガル出身のディオムさんも、中国人の楊さんも異国で大変な苦労されたわけですが、破顔で語るその姿はなんともたくましく、たおやかでした。おふたりがともに母国語でない言葉で書くことのむずかしさを“チャレンジできる楽しみ”として感じておられるのもあっぱれと思います。楊さんの「自分は蜂のように花粉を運び、動き回って、文化の蜂蜜をつくっていく」ということを話されていました(この“蜂のくだり”は日経新聞3月9日朝刊の1面「春秋」を参照)。対談後はディオムさんも楊さんも互いにハグをして満足げに降壇され、セッションは盛り上がって行きます。

そして、朝からまっていた最後のセッションはマリー・ダリュセックVS小川洋子で、テーマは「創造する女たち」。このお二人はフランスで会われたことがあるそうで今回の対談で再会を喜んでいるのがオーディエンスにも伝わってきます。生の小川さんの印象は小柄で壷井栄の「二十四の瞳」の先生のような感じ。清楚でちっとも派手なところがなく、さっぱりとしていました。

“想像”ではなく“創造”としているのがお二人の書く世界のスケールが大きいことを暗示しているようです。さすがにテーマ負けすることのない充実した対談でした。まずはダリュセックさんが「トムは死んだ」、小川洋子さんが「薬指の標本」を朗読してくださいました。ともに書くテーマとして“喪失”ということにふれ、「大きな歴史、時の流れの中で失われたもの、悲惨な出来ごとを書きとめる、つまりかつてここで何があったかを書き記すこと、そしてその死者の声を聞く耳をもっているのが作家ではないか」ということを小川さんが語っていて心に残りました。さらに「書かれたがっている物語がすでにあり、本来誰かが書きとめているはずの者の声を書きとめたい」し、「文学には人や社会の流れを変える力がある」というベテランらしい自負がみえたのもファンとしては嬉しいことでした。お二人とも、書くときは、パジャマ姿が多いようで、ここでも意気投合。

「薬指の標本」、そして作家活動と一緒に精神分析のカウンセリングもおこなっているというダリュセックさんの「めす豚ものがたり」をさっそく読んでみようと心に決めて、長い一日が終わりました。

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