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2010年5月11日 (火)

原書「Daisy Miller」

Daisy Miller (Penguin Classics) Daisy Miller (Penguin Classics)

著者:Henry James
販売元:Penguin Classics
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4月の「原書でキャンペーン」のレビューをやっと書きます。

今回は英文学のクラシック、ヘンリー・ジェイムズの中編、「デイジー・ミラー」(1878年)を読みました。

いままでヘンリー・ジェイムズの小説はむずかしいというイメージがあったせいか、「ねじの回転」だけしか読んだことがなく、なんとなく敬遠していました。

でも、デイジーという名前がタイトルにあり、「Great Gatsby」を読んだらちょっと気になりますよね。さらに、expatriate(国外在住者)を主人公にし、彼のcompatriot(同国者)を描いているという設定を知って、俄然読みたくなりました。英語もなんとか意味を取れそうだし、69ページと短いし、挑戦することにしました。

主人公は、ヘンリー・ジェイムズが自分自身を投影しているような、アメリカから離れてヨーロッパに長く住んでいる青年Winterbourne。彼が恋する美しい女性がアメリカから遊びに来たDaisy Miller。全然知らなかったのですが、彼女の本名はAnnie P. Millerなんですね。つまりDaisyという名前はニックネーム。Penguin Classicsの解説には、こうあります。

Daisy Miller: names are often significant in James.  The daisy is a very common flower; it can also be seen as simple and unpretentious.  The fact that it opens up in the presence of the sun suggests life-loving qualities.  The surname Miller reminds us that Daisy's father has made his fortune by trade, which would make him socially unacceptable to some people.  Then again, the miller's trade is not only an ancient one, but essential to the survival of society.

デイジー・ミラー:ジェイムズにとって名前は大きな意味を持つことが多い。デイジー(ヒナギク)は、よくある花で純粋で飾り気のない花だとされる。その花は、太陽が出て花開くということから、命を愛するという特質を連想させる。名字のミラー(製粉業者)という名前から、デイジーの父親が商売で財をなしたことがわかる。そのことで、社交界では受け入れられないとする人もいる。しかしながら、粉屋という商売は昔からの商いであり、社会で生きていくには必要不可欠のものである。(コニコ訳)

27歳のアメリカ人、Winterbourneは、ヨーロッパに住む叔母さんを訪ね、スイスに行きます。彼自身もアメリカを離れてから久しいのですが、そこで、とてもチャーミングなデイジー・ミラーに出会い恋をします。彼女は、ヨーロッパ大陸旅行に来たばかりの裕福なアメリカ人のお嬢さん。ヨーロッパの社交界で、アメリカにいた時のようにふるまうデイジーが次第に周りのヨーロッパ在住アメリカ人にうとまれ、イタリアでマラリアに罹って命を落としてしまうという話。

この小説のキーワードは“innocent”。この小説が書かれた19世紀のヴィクトリア時代は、女性の道徳観がギチギチに固められて行動も窮屈になっている時。デイジーは、自分の思うように振る舞う“innocent”を持ち、ひときわ目立ったはず。周りの意見に振り回されていたWinterbourneのラストの言葉を、デイジーの気持ちを辿って考えてみました。デイジーの残した言葉が、最後に彼に後悔の念を起させたのですが、彼はアメリカに戻ることなく、引き続きヨーロッパに暮らすという結末でした。ヨーロッパの価値観に反発を感じていても、永く居すぎて自分は新しい価値観を行動することはできなかったのでしょうか。“I was booked to make a mistake.  I have lived too long in foreign parts.”(僕は、失敗をしでかすようになっていました。外国にながく住みすぎたんですね。)という彼の言葉が印象的です。

この小説の語り手は、“I”という一人称で書かれているものの、視点はWinterbourneのものでDaisyの内面の気持ちも直接描かれるところがないという、不思議な文体です。

「The Great Gatsby」の読書会が今月で終わるので、次の読書会の候補にしたいと思います。

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