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2010年9月 1日 (水)

原書「The Garden Party」

The Collected Stories of Katherine Mansfield (Wordsworth Classics) The Collected Stories of Katherine Mansfield (Wordsworth Classics)

著者:Katherine Mansfield
販売元:Wordsworth Editions Ltd
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8月も終わり、あ~、もう9月。8月の原書のレビューも今日になってしまいましたが、気を取り直して・・・

ニュージーランド生まれの作家、キャサリン・マンスフィールドの短編集から「The Garden Party」を読みました。

短編の名手というと、ストーリー展開の面白さを売りにする作家と、物語の展開よりも登場人物の心情をスケッチするのを得意とする作家がいると思いますが、キャサリン・マンスフィールドは、後者の代表のような書き手です。(対して前者の代表は、モーパッサンとか)

翻訳本では、タイトルが「園遊会」となっているのですが、日本語で“園遊会”というと、私はどうしても天皇陛下が、オリンピックのメダリストにお声をかけるような、あの“皇室の園遊会”をイメージしてしまいます。でも、この短編(22ページという短さ)の“園遊会”は、上流家庭のシェリダン一家が、初夏のある晴れた日に庭で友人を招いた昼食会のこと。

主人公は、シェリダン家の娘、ローラです。彼女は、おいしくて有名なシュークリームをおねだりするような小さい子ではないのですが、かといって、家の料理番から「お母さんに秘密で一つ上げましょう」と言われれば、やっぱり嬉しい年ごろ。つまり、子どもから大人になりかかった思春期の娘さんです。

印象に残るシーンはいくつかあるのですが、ローラのみずみずしい感受性が活き活きと描かれていて、10代だった時の気持ちを久しぶりに思い出しました。パーティーが始まる前に近くの貧しい家の人が事故で亡くなったことを知り、パーティーをやめた方がいいというローラに母親はこうたしなめます。

'But, my dear child, use your common sense.  It's only by accident we've heard of it.  If someone had died there normally - and I can't understand how they keep alive in those poky little holes - we should still be having our party, shouldn't we?'

(でもね、常識で考えて。亡くなったってことを聞いたのはたまたまよ。家の外で誰かが事故でなく普通の死に方をしたとすれば――あんな狭苦しい穴のようなところでどんなふうに暮らしているかわからないけど――私たちは、それでもパーティーをすべきでしょ。そうでしょ?)

と理屈になっているようで、腑に落ちないことをいいます。結局、母親に押し切られ、パーティーは行われ、成功裏に終わります。

その後、パーティーの残り物を亡くなった貧しい家に届けるということになり、その使いにローラが行くことになり、現実の死に対面するということをはじめて経験します。そこで発するローラの言葉が“Forgive my hat”というもの。亡骸を前にして、何か言わなければと思いで、派手な帽子をかぶっていることをわびるローラ。そしてその家から一気に駆け出すローラ。子どもから大人へ、活気あるパーティーから死の床へ、富めるものから貧しいものへ――ローラは、いくつもの狭間を駆け抜けます。

ラストで出逢った兄のローリーに“Isn't life, isn't life- ”(「人生って、人生って」)と繰り返し訪ねる姿が心に残りました。秀作です。

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コメント

こんにちは、コニコさん。久々にお邪魔しました。
「園遊会」という邦題は、物語の内容からすると確かに違和感がありますよね。
私もこの小説は初めて読んだ(もちろん翻訳で)小学5年生の頃から大好きな作品です。なかでも一番好きなのは、気持ちのいい初夏の日曜日に自宅で開くパーティーの準備をしている部分。ローラの目を通して、家中のせわしなくも華やいだ雰囲気が生き生きと描かれていて、読み返すたびになんだかワクワクしてしまうのです。
後半、華やかなパーティーとは正反対に位置する「理不尽な死(事故)」や「貧困」を目の当たりにしたローラが感じること・・・
機会があれば読書会でも取り上げてみたいですね。


投稿: しのぶ | 2010年9月 2日 (木) 12時30分

しのぶさん、こんばんは。さっそくコメントをありがとうございます。

仰る通り、冒頭の「パーティー日和」を思わせる件から、ローラをはじめ、女姉妹たちのパーティーを前にしたにぎわいが聞こえてきそうな描写でした。

読後の余韻も深いですね。ことばで表わさせない人生の複雑なものでローラのこころはいっぱいになっているのが、愛おしい気がします。

投稿: コニコ | 2010年9月 3日 (金) 00時10分

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