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2010年11月19日 (金)

「パリ、娼婦の館」

パリ、娼婦の館 パリ、娼婦の館

著者:鹿島 茂
販売元:角川学芸出版
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映画「わたしの可愛い人 シェリ」を観に行った時に映画館で売られていた本が、この「パリ、娼婦の館」でした。

ちょっと、のぞいてみたい気がしませんか?

いつもの癖で“あとがき”から読んでしまった私が見逃せなかったのは、ここ!

中世の昔から第二次大戦まで、フランスは、メゾン・クローズとかメゾン・ド・トレランスと呼ばれた娼館を社会のメカニズムの一部に組み込むことでなりたっていた。いいかえると、娼館の存在を前提として機能していた社会を考察するのに、あたかも娼館が存在しなかったように振る舞うことはできないということだ。たとえば、フロベールやゾラ、プルーストを読むのに、高級な娼館や高級娼婦のことを知らないで済ますことは不可能なのである。(293ページ)

ふむフム、フローベルの「ボヴァリー夫人」読書会でも、フランスの恋愛観、結婚観が話題になってかの地の文化的なものを知りたいと思っていたものでしたから、さっそく読むことにしました。

読んでビックリ、写真もナマナマしく、映画「シェリ」に出てくるような高級娼婦から、街角の私娼にいたるまでの実態をつぶさにレポートしてありました。そのネットワークシステムは「アメリカの大リーグと3A、2A,1Aリーグの組織図に似て、パリ、地方大都市、地方小都市、田舎町を繋ぐピラミッドを成しているおリヨンのよう地方大都市で、下から上へ行く流れ(成り上がり)と上から下へ(都落ち)の流れが交錯していた」(38ページ)そうです。

また、どういう女性が娼婦になっていたか、スカウトされていったか、などの記述も洞察鋭く、印象的。19世紀後半のフランスでは、小間物を扱うブティックがスカウトたちにとって「選ばれた漁場」だったということです。まだドレスがあつらえの時代だった頃、女の子の消費癖が発散されるところは小間物ブティックしかなかったからだそうで、娼婦に最も適した性格である奢侈に対する弱さを持つ娘を探すには、もってこいの場所だったということです。そういえば、ボヴァリー夫人は娼婦ではなかったけれど、贅沢なドレスには目がなく、“奢侈に対する弱さ”はたっぷりと持っていたといえましょう。

一番紹介したいのは、フェリックス・ルニャーという社会学者が1906年に実施したメゾン・クローズ(娼館)の客層の4タイプ。(161ページ)

①変化を好む放蕩者。
②まだ女にナンパをする勇気のな内気な若者。
③生まれついての醜男。
④妻が病気がちでセックスに応じてもらえない既婚者。

これって、きっと日本でもキャバクラとかに行く客層と変わらないんじゃないかと思ってしまいます。いつの世も変わらないものってあるんでしょうね。

そうそう、中盤には「シェリ」の著者、コレットの記述もあり、20世紀初頭に人気のあった高級娼館「スファンクス」の常連で、そこの女将マルトゥーヌと親しかったとのこと。彼女からの情報や実際に見聞きしたものが小説の源泉になっていたのでしょう。

その他、娼館に現れる“変態“客などの章は、人間の心の底にあるどす黒いものをみてしまったような後味の悪さがありましたが、押しなべて日本と比べて、また現代と比べて、同じでもあり、大いに違ってもあり、面白く読めました。

この本のキャッチフレーズ“娼婦の館と娼婦たちの世界に踏み込み、パリの夜の闇に迫る画期的な文化論”、まさに迫真のルポルタージュという感じでした。

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コメント

コニコさんの解説とても興味深く読ませていただきました。

フランスの娼婦と言えば、学生の時に読んだデュマ・フィス作の『椿姫』を思い出しました。随分記憶が薄れてしまいましたが、フランスの娼婦から見た社会観や人生観にかなり強烈なインパクトを受け、気に入った本でした。娼婦の持つ高貴なプライドみたいなのが描かれていた気がします。

投稿: 友達のI | 2010年12月 2日 (木) 01時43分

Iさん、おっしゃる通り、フランス文学には娼婦が登場する名作が多いですよね。オペラにもなった「椿姫」しかり。ゾラの「居酒屋」、「ナナ」も遠い昔に読んでパリの街や人々ってどんなだろうと強く惹かれたことを思い出した。

娼館の歴史を読むことで、興味深いフランス社会史を辿れた気がしましたよ。

投稿: コニコ | 2010年12月 3日 (金) 06時43分

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