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2011年2月12日 (土)

「悪貨」

悪貨 (100周年書き下ろし) 悪貨 (100周年書き下ろし)

著者:島田 雅彦
販売元:講談社
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島田雅彦さんの小説は、「君が壊れてしまう前に」を読んだだけでなので大したことは言えませんが、「こんな小説を書くんだ」とちょっと驚きでした。

ともかく、テンポが良くてびっくり。特に出だしから中盤までの話の展開がスピード感あふれてぐいぐい惹き込まれてしまいました。純文学路線かと思っていたら、劇的で、島田さんのお好きなオペラ的?

この感覚、はて?どこかで経験したような?考えてみて、「そうそう、 『ハゲタカ』を読んだ時と似ていると思いました。経済小説としても、偽札が今の世界の経済にどう影響するかなど、とてもダイナミックに描かれて面白い。銀座などを歩いていても中国人ショッピングパワーを感じるこの頃であるだけに、この本の中国の経済力が妙にリアルです。

「悪貨」の謎めいた主役、野々宮冬彦と、「ハゲタカ」の鷲津を比べて、最後まで読者をくぎ付けに出来るかが要でした。この野々宮という人物が「彼岸コミューン」と呼ばれる自主集団に多額の投資をするというところから、話の謎が少しづつ明かされていき、大きく破滅へハンドルを切られていくことになるのですが、終盤が多少失速気味かなという気もしました。

全体としては、貨幣経済の脆さを突いた、よく練られた小説だと思います。

最後に、フクロウという人物が偽札を吟味するところの描写が面白かったので、引用しておきますね。

 実際、多くの人々の手や財布を渡り歩いてきた紙幣は、無数の喜怒哀楽を反映している。そればかりか、恨みや妬み、失意、汗や涙や血液さえもが付着している。中には呪われた紙幣なんてものもある。複雑な思念を吹き込まれた福沢諭吉は、時に笑い、時に泣き、微妙に目をつり上げたり、口元を緩ませたりするのである。ちょうど、能面があらゆる表情を兼ね備えているのに似ている。(84ページ)

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