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2011年6月29日 (水)

「若い小説家に宛てた手紙」

若い小説家に宛てた手紙 若い小説家に宛てた手紙

著者:マリオ バルガス=リョサ
販売元:新潮社
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先月講演を聴いて、すっかりバルガス=リョサ氏のファンになったので、サッと読める本、重厚な長編ではない本はないかと探してみました。

小説ではないのですが、「若い小説家に宛てた手紙」は、本好きには楽しく読めて、かつ「そういうことなのか」と妙に納得できるところが多く見つけられる本でした。

以前に「Reading Like a Writer」という本を読みましたが、バルガス=リョサ氏のこの本はまさに作家が世界の名作を作家の気持ちで読んでいるんですね。

何気なく読んでいるとわからない作家の巧みな技がバルガス=リョサ氏によって、丁寧に解き明かされていきます。

  特に惹きつけられたのが第4章の「文体」と、第6章の「時間」。

バルガス=リョサ氏は、こんなことばで優れた文体を説明しています。

たとえば、ボルヘスの短編やフォークナーの小説、イサク・デーネセンの物語では、内容とそれを語る言葉が分離しているように感じられません。まったく違った傾向のこれらの作家たちの文体が説得力を備えているのは、言葉と人物、それに描かれている内容が分かちがたく結びついていて、ひとつの統一体を作り上げているからです。創造的な作品に備わる「必然性」という属性を取り上げたのは、実のところ〈内容〉と〈形式〉がこのように完全に一体化しているのだということを伝えたかったからなのです。(43ページ)

確かに、例に挙げられている作家の文章は全然違った趣ですが、その語られることばに読み手が感じる説得力は、ゆるぎないものです。

また、小説の中の「時間」についての言及―「〈時間的視点〉とは、小説における語り手の時間と語られた内容の時間との間にある関係」(72ページ)も考えさせられました。この本の中で紹介されているロレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』は、小説的時間を独創的な形で構成している特異な例として上げられています。主人公―語り手の生まれる前の伝記が何十ページにもわたって綴られているということで、面白そうです。

また、ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』も時間をひとつではなく、2つの体系でお話を進めている例として挙げられていました。この作品は何十年も前に映画で観たことがあり印象深かったのですが、本にも興味がわいてきました。

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この本を読むと、バルガス=リョサ氏がひじょうに真摯に“書く”ということを語り、未来の若い書き手に伝えたいと思っているのが深く感じられます。小説を読む上で、たくさんの貴重なアドバイスがあり、もう一度読み直さないと。小説のもつ本質的な素晴らしさがダイレクトに伝わってくる読み応えのある本です。

追伸:先日の講演会に一緒に行った友人が撮った写真を載せますね。

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