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2011年9月16日 (金)

「ジェノサイド」(少しネタバレあり)

ジェノサイド ジェノサイド

著者:高野 和明
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
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この手の本は自分ではなかなか手に取らないのですが、「面白いからぜひ読んでみて」と言われて手にとりました。590ページの大作です。

主役ではないのですが、冒頭に登場するアメリカ大統領バーンズ氏は、どこからみてもブッシュ前大統領がモデルですね。

ホワイトハウスで繰り広げられる最高機密の『ネメシス作戦』を追う形で物語は加速していきます。

といっても、舞台は地球規模。北アメリカ、日本、スペイン、そしてアフリカと、鳥瞰ならぬGPSから登場人物を見つけ出し、エシュロンがあらゆる情報を検索するという、最新の科学技術が満載です。さらに、難病の新薬作りや、人類の進化の謎など興味は尽きることはありません。

それだけに、前半は、話が専門的で読み進むリズムに乗りにくいところもありましたが、実際に人間の知能をはるかに超えた“ヌース”なるものが出てきてからは息を突かせぬアフリカ脱出作戦がはじまり、読み手はまるでPCの前で脱出メンバーの動きを見せられているようでした。

愛すべき人物は、頼りないケントくん。味方の警告にもたもたして捕まりそうになってばかりで、ハラハラ。何度も訪れる困難を克服して、無事に日常の生活へと帰っていくわけです。以前には思ってもみなかった父親への大いなる畏敬の念を感じながら。

この物語には、実はいくつもの“父親と息子”の物語が書かれているんですね。バーンズ大統領の父親との軋轢も彼の精神に大きな傷を残していることが暗示されているし、“ヌース”と父親の愛情深い関係も描かれています。瀕死の息子とその息子を助けるために命をかける父、イエーガーも心に残ります。人間の父子のいろいろな関係を描きながら、わたしたちの利他的な面や凶暴な面を炙りだしているともいえるでしょう。

もう一つ、印象的だったのが、この話のハイライトになるシーン、脱出劇がアフリカのコンゴで起きている点です。コンゴといえば、コンラッドの「Heart of Darkness(闇の奥)」が思い出されます。過酷な歴史を持つこの地で、今も内戦が続いているのでしょうか。アフリカが大国の思惑の通りに動かされているのが、ジェノサイドを通しても描かれていました。特に子どもの兵士の件は、読むのが辛くなりました。

エンターテイメントとしても尻上がりに面白くなっていくし、膨大な情報を明晰な視野でまとめ上げた知的好奇心を満足させてくれるお話です。唯一、登場人物がたくさんでてくるので、その手の小説は苦手という人はちょっとつらいかも。

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