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2012年1月24日 (火)

ヘミングウェイと猫と雨

今月の「コニコの英語カフェ」(月1回英語で短編を読む会)では、ヘミングウェイの“Cat in the Rain”(「IN OUR TIME」より)を読みました。雨のなかの猫を見つめる若いアメリカ人夫婦の話で、わずか4ページという短かさながら、クリスプな文体で読ませるすぐれた短編でした。

ヘミングウェイの猫好きは有名ですが、この短編と並行して読んでいた「武器よさらば」にも、主人公フレデリックが、恋人のキャサリンを“キャット”と読んでいたことからも、猫に対する愛情の深さが感じられました。

そして、「武器よさらば」の中で交わされるフレデリックとキャサリンの会話から浮かび上がる“雨”のイメージは・・・

「ちょっときいて、この雨の音」
「ざんざん降りだな」
「あなたはわたしをいつも愛してくれる。そうでしょ?」
「ああ」
「それは雨が降っても変わらないわよね」
「ああ」
「よかった。わたし、雨がこわいの」
「なんで?」おれは眠かった。外では相変わらず雨が降っている。
「わからない。でも、ずっと前から雨がこわかった」
「雨は好きだけどなあ」
「雨の中を歩くのは好きよ。でも、雨って、恋人には冷たいの」
「いつでも、きみのことは大好きだよ」
「わたしも大好き。雨のなかでも、雪のなかでも、雹のなかでも――あと、何がある?」
「さあなあ。そろそろ眠くなってきた」
「じゃ、寝てちょうだい。わたしはどんな天気でもあなたが好きよ」
「あなたといっしょなら」
「なんでこわいんだ?」
「わからない」
「いってごらん」
「いわせないで」
「いって」
「いや」
「いって」
「わかった。ときどき雨のなかで死んでいる自分が見えるからよ」
「ばかばかしい」
「ときどきあなたが死んでいるこtもあるの」
「そのほうがまだありそうだな」
「ちがう、そんなことないわ。だって、わたしが守ってあげるもの。わたしにはできるの。ただ、だれも自分で自分を守ることはできない」
(「武器よさらば」(上)光文社213ページ)

長々と引用しましたが、この場面は大きなクライマックスであり、伏線でもある印象深いシーンです。そこにただよう“雨”のイメージは、“死”のイメージ。思いがけないラストの悲劇につながるもので、最後の一文、「雨が降っていた。」を読み終えてなお、その雨音が耳に残りました。

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