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2012年2月14日 (火)

「黄金のフルートをもつ男」

音楽に関する本を読むのは、音楽を聴くのと同じくらい好きです。このところ、長谷川陽子さんの「チェロの森」や、ピアノコンクールが出てくるミステリー「さよならドビュッシー」を読んだり、音楽づいていますが、今回は、世界のフルート奏者、サー・ジェームズ・ゴールウェイの伝記「黄金のフルートをもつ男」(訳は「ロンドンはやめられない」の高月園子さん)を読みました。

年末にBSでも彼のコンサートが放映され、軽やかな美しいフルートの音色を楽しんでいたので、どんな人生を過ごしてこられたのか、ワクワクして読みました。

冒頭場面は、エリザベス女王の爵位授与式から。「そうか、彼はイギリス人なのね」と思ったものの、彼は北アイルランドのベルファスト生まれで、イギリスとアイルランドをこよなく愛しているサー・ゴールウェイ。複雑な事情を抱えるアイルランドで育ちながらも、そのユーモアと天性の感受性で、ずいぶん早くからフルート奏者の頭角を現わしていたんですね。その才能に惚れて、フルートの先生が彼をとりあった話なんていうのもあったり。

もちろんフルートに対する愛情が深く、フルートのレパートリーを広げようと、フルート協奏曲など(中でもジョン・コリリアーノ作の「ハ―メルンの笛吹き幻想曲」はぜひ聴いてみたい作品)を依頼し続けていたりしていて、彼ってフルートを吹く人のなかでも前人未到の開拓者なんですね。ベルリン・フィルの主席フルート奏者の地位を捨ててまで、ソロのフルート奏者として身を立てていくなんて、挑戦者でもありますし。ベルリン・フィルのくだりは、オーディションから退団まで、ワクワクして読みました。

印象的だったのが、誰でもしそうな質問、「同じ曲を何度も何度も吹いて飽きないか」に対する彼の答え。

「それはちょうど聖書の一節を読むようなものです。ある箇所を初めて読んだときにも、何が書いてあるかはわかる。でも、もう一度読むと、より多くのものをそこから引き出せる。そして、さらにもう一度読むと、一度目に完全に見逃していた部分があることに気づく。それだけでなく、一度目に見逃していたものの中に、より自分と関連づけられるものを発見する。モーツァルトの協奏曲も同じで、演奏すればするほど、その本質に気づかされるのです」
 演奏を重ねるごとに、その作品に対するわたしの解釈は進歩し続けていると信じている。 (240ページ)

名曲、そして名作は何度訪ねても学ぶものがあるという確信―それがあるからこそ謙虚にその作品と向き合え、進歩し続けられるのでしょう。文字通り「黄金のフルート」を持つ、とても魅力的なサー・ゴールウェイ、その茶目っ気のある冒険心に乾杯!

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