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2012年3月 1日 (木)

「おやすみラフマニノフ」(ちょっとだけネタバレあり)

昨日は、今年のラ・フォル・ジュルネのテーマについて書きましたが、そのポスターの中心にいるのがラフマニノフ。そのロシアの偉大なる作曲家であり、ピアニストであった彼の名前がついた本、「おやすみラフマニノフ」を読み終えました。

著者は、先日読んだ「さよならドビュッシー」の中山七里氏です(七里というお名前から女性だと思っていたら男性なんですね)。

今回の主人公は音大でヴァイオリンを学ぶ大学生、晶(あきら)くん。でもって、前作「さよならドビュッシー」で、すっかりコニコもファンになった岬先生が再登場しています。

ミステリー度は、前作の方があったかな~という気はしますが、音楽のちりばめ方、選曲はコチラの本がメチャメチャ好みです。

その選曲も中山氏は、“鐘”というキーワードで選んでいるんですね。パガニーニ、リスト、ラフマニノフの名曲は皆、“鐘”をイメージしたものばかり。主人公の晶が勝負所で弾くのが、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調Op.7、第3楽章のロンド(別名“鐘のロンド”)です。そしてその曲をピアノ曲に編曲したものがリストの「ラ・カンパネラ」。パガニーニの“鐘”とリストの“鐘”が響き合います。傑作なのは、リストの「ラ・カンパネラ」を熱演している音大生が「プチ子・へミング」なんてあだ名がついていることです。ピアノの「ラ・カンパネラ」といえば、もうフジコ・へミングというように連想してしまう私は思わず“うふふ”でした。

今回は、主役がヴァイオリンのコンマスだったので、ヴァイオリンの曲、しかも大好きなチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルトが出てきて大興奮。映画「オーケストラ!」でも取り上げられた名曲です。その曲の出番は、台風による豪雨で避難した人々がパニックを起こしそうになった時でした。岬先生の導きにより、晶もそして聴衆も一時の安らぎを得ることとなります。災害を嘆く住民を前にして、曲を弾くことを逡巡していた晶に向かって岬先生のいうことばも心に残ります。

「科学や医学が人間を襲う理不尽と闘うために存在するのと同じように、音楽もまた人の心に巣食う怯懦や非情を滅ぼすためにある。確かにたかが指先一本で全ての人に安らぎを与えようなんて傲慢以外の何物でもない。でも、たった一人でも音楽を必要とする人がいるのなら、そして自分に奏でる才能があるのなら奏でるべきだと僕は思う。それに音楽を奏でる才能は神様からの贈り物だからね。人と自分を幸せにするように使いたいじゃないか」(単行本「さよならラフマニノフ」208ページ)

東日本大震災のあとの多くの音楽家たちの気持ちを代弁しているような気がして、熱い気持ちになりました。

そして、物語のラストシーンで明かされる謎解きは、ベートーベンが経験した難聴の苦しみとチェリストのジャクリーヌ・デュ・プレが患った多発性硬化症が影を落とし、芸術家の性(さが)を感じさせることとなります。最後に耳に残るのが柘植学長の渾身のラフマニノフ、前奏曲「鐘」。バンクーバー・オリンピックの時に、浅田真央選手がフリースタイルで使った重厚な曲といえば思い出される方も多いと思います。この曲はまさしく彼自身の鎮魂歌となっていたのでしょう。

音楽的によく練られた本で、中山氏はお気に入りの作家になりました。

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