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2012年4月25日 (水)

「怪物はささやく」(「A Monster Calls」)

怪物はささやく (パトリック・ネス作、シヴォ―ン・ダウド原案)

いつもすてきな本を紹介してくれるmichiさんのブログでレビューされていた「怪物はささやく(原題「A Monster Calls」)を読みました。墨絵のように黒々としたジム・ケイのイラストが印象的です。

真夜中を過ぎたころ、12時7分、悪夢と連れだって裏庭からやってきたイチイの木の怪物。その怪物は、13歳のコナーにこう言います。

「わたしが三つの物語を語り終えたら、 四つめの物語をわたしに話すのだ」と。

そして怪物は付け加えた、その物語は少年が心に秘めた真実の物語であり、 その物語を語り聞かせるために少年が怪物を呼んだのだ、と。

とてつもなく大きく、恐ろしい怪物を見ても、コナーは怖いと感じないほど自分の心の殻を厚くして、なんとか一日一日をやり過ごしています。少年が抱える問題は、このイチイの木のように大きくてどうしていいかわからないほど深刻です。癌に罹りどんどん具合の悪くなっていく母親、頼りにならない、遠くに住む父親、そりの合わない祖母、いじめっ子のいる学校・・・ことばにするには切なくつらすぎる真実。荒ぶるコナーの心にはどうしようもない感情がこみあげてきて・・・

怪物はささやきます。「真実を話せ」と。コナーの言葉にならない言葉が胸を打ちます。

イチイの木はイギリスやアイルランドでは墓地に植えられる木だそうです。種には毒性もあり、その毒が薬にもなるといいます。使い方次第では毒にも薬にもなる矛盾したもの。イチイの木が語る3つの物語の説明に、こんな言葉がありました。「人間の心は、毎日、矛盾したことを幾度となく考えるものだ」(201ページ)イチイの木が老木であり、長い間の人間の生き死にを見続けてきたことを想うと、コナーの苦しみを見ていられず、重い腰を上げた翁(相当怖くてきびしい!)のような気がしてきました。

ヤングアダルトの本ではありますが、10代の読者がコナーに焦点を当てて読む他、成人した読者がコナーの母親やおばあさんの気持ちを慮る読み方もできて、気持ちが揺さぶられる物語でした。

再読したい本です。

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コメント

「怪物はささやく」読了されたのですね。感想アップしてくださりありがとうございます。この本、ヤングアダルト向けだけれども、親の立場で読んでも色々考えさせられますよね。つくづく体には気をつけようと思いました。

下のホットケーキと上の桜の和菓子が羨ましくてたまりません!ホットケーキは作ろうと思えば作れませんが、和菓子の方は無理…本当に麗しいですね。

投稿: michi | 2012年4月28日 (土) 20時39分

michiさん、こんばんは。やっと読みました!英語でも読んでみたいと思っています。原書の表紙をみてびっくりしたのですが、翻訳は、裏焼きしているのでしょうか?左右逆になっています。

それと、親は元気で、夫婦は仲よくがいいですよね。

和菓子に劣らず、桜の絵も素晴らしいものでした。そちらにもワシントンDCのように桜が渡るといいのに、なんて思いましたよhappy01

投稿: コニコ | 2012年4月28日 (土) 23時41分

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