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2012年9月28日 (金)

イチイの木で想像したこと

前回ご紹介した「渡りの足跡」の冒頭章“風を測る”の中で、イチイの木について語られるくだりに興味がわきました。

 あれは?私は年を経た魔法使いのような赤っぽい木を指さす。あれは、オンコですね、イチイです。案内人が答える。癖のある老人のような年季の入ったねじ曲がり方をしたオンコの木。オンコの木がイチイのことだと、どこかでは読んでいた気がするが、感覚としてピンと来なかったので、私の中で知識として蓄積されることはなかったのだろう。ここで案内人に言われて初めて二つが結びついた。私のイメージにあるイチイといったら英国の古城の庭園やマナーハウスの庭に年代物のトピアリーとしてリスやら幾何学的な模様やらに仕立てられた姿だ。特にルーシー・ボストンの十二世紀からの歴史を持つマナーハウスの庭の、彼女自身が丹精したトピアリーの巨大さは今でも目に浮かぶ。そしてオンコ、といえば知床を代表する老賢人のような木をいう印象を持っていたのだった。その全くかけ離れた二つのイメージを結びつけるのにちょっと時間がかかった。そうか、イチイって自然のままに放っておけば、こんな風にとりとめもなくなるわけなんですねぇ……と、思わずため息をつく。とりとめもなく、奔放に、凄まじく。樹皮一枚下に、どんな内実が隠されているのか。natureの本質は、いつもどこかに見え隠れしている。(14ページ)

イチイの木といえば、今年の春にレビューした「怪物はささやく」で登場した怪物がイチイの木でした。この「怪物はささやく」のイチイの木も、ものすごいパワーを持った老賢人のように思えましたが、梨木さんが見た北海道のオンコ(イチイ)も“年を経た魔法使い”のような木だと書いてあって、なるほど同じ木だと妙に嬉しくなりました。

梨木さんのイチイのイメージがトピアリーとして仕立てられた姿であったというのも、また新鮮で、木も育て方次第でまるで違った種類のようにもなるのだと、面白く思いました。

そして、先日観た映画「指輪物語 二つの塔」に出てくるtreebeardも、もしかしたらイチイの木かもしれないとふと思いました。梨木さんが深く感じられた“natureの本質”が奔放に凄まじく樹の内面に蓄積されて人間には測り知れない日々重なる時代を作っているのかもしれません。

Treebeard

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