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2013年2月 6日 (水)

1月の読書まとめ

おくればせながら、1月の読書をまとめてみました。慌ただしい年末年始に8冊読めたのは、自分でもなかなか頑張ったと思います。
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①いかにもオスカー・ワイルドらしいアイロニーの効いた短編集。そして、もちろんこのシリーズお決まりのボルヘスの序文もアイロニーが効いている。「ワイルドのメッセージ、彼の無敵の幸福が、われわれの記憶の中に、ちょうどあのデンマークの王子のような悲劇のダンティーとしての彼の姿を、消えることなく刻印しているのである」という文が心に残る。「カンタヴィルの幽霊」が幽霊の視点からの幽霊物語で楽しい。
②洋書のような装丁で、ムムッ、「高慢と偏見、○○」なんでしょう!この本って感じでしたが、どっぷり楽しめました。オースティンへの心のこもったオマージュが感じられます。原文だとさらにオースティンらしさがあるのではと推測できますが、ダーシーはじめ、人物描写がすばらしい。それぞれの登場人物のセリフや行動に妙に説得力があって、読んでいて嬉しくなってきます。「説得」と「エマ」のスパイスも少々あり、オタク的な喜びも!初P.D.ジェイムズ本でした
が、他のミステリーも読んでみたくなりました。

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
P・D・ジェイムズ

③小川さんの本は、ひっそりと、でもしっかりと忍耐強く生きている人たち、物たちを実に丁寧に描いているな~、と感じ入ってしまう。時として、その視線は標本をみるような客観性があるのだけれど、同時に見守っていく眼差しでもあり、読後にはともに幼い頃のアルバムをめくったような懐かしい気持ちになる。全体がゆるやかにつながっている連作短編。「遺髪レース」の余韻がいい。

④日経新聞の「私の履歴書」を読んで、米沢氏のエネルギッシュな生き方に圧倒されました。さらにこの方の磁力に引かれてこの本も一気に読みました。もっとも心に残った言葉は、米沢氏のモットーだという“自分の可能性にあらかじめ自分で限界を引かない”というものです。これも最愛の夫の「できないわけはないだろう」という言葉からきているのだと思うと、本当にこの夫婦はお互いのベターハーフだったのだな、と思えてきます。素晴らしいお二人に乾杯!
⑤過去の輝きが、「オペラ座の怪人」のように色づいていくことはないのに、それを夢見る母、そして屈折した似非坊ちゃんの弟。ゆがんで壊れている家族たち。日常からはなれた一泊の旅行に奈津子は、過去と今を凝視していきます。彼女の“あの生活”を良くも悪くも否定しない気持ちにさせた夫、太一の聖なる屈託のなさに光をみる想いです。
⑥人間観察を注意深く続けて、発する言葉を選んでいくと、自分の心も他人の心もうまい具合にわかっていくのでは、という論が具体的な例で示されていて興味深かった。そうした洞察力が“自分の思うようになる”生き方につながるという考え方が、アランの「幸福論」で述べられていることと似通っていて、面白いと思った。
⑦「読書の技法」というタイトルに惹かれて手に取ってみた。はじめて佐藤優さんの本を読んだが、まさに「読書道」という感じのストイックさだ。読書ノートをつけるなど、参考にしたい点が多々あるが、とても同じやり方で読書をしていけるとは思えない。この方の一日のスケジュールをみてビックリ。ほとんど寝ていない。ちょっと常人ではないと思った。

⑧孤高の戦士ハンニバルを輩出したカルタゴの滅亡に、胸を突かれた。先日観た「トロイアの女たち」の奴隷にされた人々の姿と重なる。カルタゴを倒したスキピオ・エミリアヌスがカルタゴの運命を想って涙を流したという記述がさらに切ない。彼は、人間にかぎらず、都市も、国家も、そして帝国も、いずれは滅びることを運命づけられていることに、想いを馳せずにはいられなかったのだ。「わたしの胸を占めているのは勝者の喜びではない。いつかはわがローマも、これと同じときを迎えるであろうという哀感なのだ」という文は最も心に残った。

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