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2013年3月31日 (日)

タブッキと須賀さん

去年のユリイカ6月号でアントニオ・タブッキを特集していました。

その中の堀江敏行さんと和田忠彦さんの対談、「アントニオ・タブッキ、手と声の記憶をめぐって」に須賀敦子さんのことが出ていたので、読んでみました。

須賀さんの病気がだいぶ重くなった頃に来日したタブッキ氏。彼と公開対談が行われた話が出ていて、その時壇上でタブッキ氏を前にして須賀さんが「最近、よく思うの。わたしは死ぬとき何語で死ぬのかしらって」っと言ったというのです。日本人として生まれ、英語で教育を受け、フランス語を留学して勉強し、イタリアで結婚生活を送った須賀さん。最期をさとった気持ちの中で、そんなことを思っていたのですね。

和田さんがタブッキ氏と須賀さんの結びつきについても書いていて、印象に残りました。

和田:タブッキは須賀さんを「インド夜想曲」の訳者として会う前から、谷崎潤一郎のイタリア語翻訳者として知っていたんですね。とりわけタブッキは「陰翳礼賛」がお気に入りで、「陰翳礼賛」がタブッキに与えた影響はものすごく深いものがある。

堀江:それはじつに夢のような話ですね。須賀さんは、日本語の作品をイタリア語に移して、その文学的なイタリア語に影響を受けた作家の作品を、ふたたび自分の手で日本語に移した。そして、あたかもカルヴィーノと同様に、みずからの最期に近くなって、その作家の背中をさらに押したわけですから。(「ユリイカ」2012年6月号 122ページ)

ことばの記憶が連なって、過去と未来につながっていく豊かな広がりを感じます。本当に夢のような話です。

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