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2013年5月 3日 (金)

「舟を編む」

話題の本です。そう、本屋大賞にもなりました。読むものを魅了する本です。登場人物の魅力、設定の面白さも抜群です。

でも、なんといってもこの本の、“舟”が漂う“言葉”という大海の魅力は見逃せないものでした。「言葉は生きている」、「言葉は自由だ」という辞書編纂に関わる人々の情熱の深さをこの本は充分に語っていました。

そのエッセンスを松本先生は、まじめとにバトンを渡すように語ります。もっともコニコの心に残るシーン――体調を崩した松本先生が辞書の進捗状況を心配しながら語ります。

「辞書は完成してからが本番です。より精度と確度を上げるため、刊行後も用例採集に努め、改訂、改版に備えなければなりません。」
 日本で一番規模の大きな辞書は、『日本国語大辞典』だ。この辞書は初版完結から24年後に第2版が刊行され、収録する見出し語の数も45万項目から50万項目に増えた。編集者や執筆者が、生き物であることばの変化に対応し、たゆまず言葉を収集して、ひとつの辞書を大切に育て続けている証だ。

さらに松本先生は、海外の辞書編纂が国家の威信をかけてなされるものに対して、日本の辞書が国主導のものでないことにふれます。

「翻って日本では、公的機関が主導して編んだ国語辞書は、皆無です」
松本先生はとろろそばを半分ほど残し、箸を置く。「日本における近代的辞書の嚆矢となった大槻文彦の『言海』。これすらも、ついに政府から公金は支給されず、大槻が生涯をかけて私的に編纂し、私費で刊行されました。現在も、国語辞書は公の団体ではなく、出版社がそれぞれ編んでいます」(中略)
「言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟。『大渡海』がそういう辞書になるよう、ひきつづき引き締めてやっていきましょう」

224ページから227ページの4ページは、珠玉の言葉にあふれていました。日常的に使っていて、空気のように当たり前になっている言葉たちに想いを馳せる、それも生涯をかけて仕事としてやっている人々に拍手をおくりたい気持ちになってきます。

手にとって、言葉の感触を確かめたくなる本です。

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コメント

親子で読みました。こころに染みわたる、いい小説でした。力のある作家さんだと思います。
辞書に倣って装幀も凝ってますよね。

投稿: mikarin | 2013年5月 4日 (土) 09時13分

mikarinさん、こんばんは。おお、親子で読まれたんですね。娘さんはどんな感想をお持ちになったのかしら?現役で辞書をバリバリ使っている時期ですものね。あっ、でも国語の辞書をよく引くようになったのは、私の場合、年取ってからだわ~happy02

装幀もホント、いい感じですね。
楽しい連休をお過ごしくださいねheart

投稿: コニコ | 2013年5月 4日 (土) 22時23分

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