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2015年2月の記事

2015年2月13日 (金)

映画「ナショナル・ギャラリー英国の至宝」からエクフラシスを学ぶ

このところ、美術作品を展覧会で見るだけでなく、美術に携わることがらとしてとられるドキュメンタリー映画が話題になっています。そのうちのひとつ、「ナショナル・ギャラリー英国の至宝」を観てきました。

ナショナル・ギャラリーは、去年の秋に訪れたばかりの美術館だったので、なんだか再会できた友のようで見に行けて嬉しかったです。3時間という長さでしたが、登場する人々の美にかける情熱のあふれ方がとにかく熱いこと。その理由は、多くの人が言葉をつくして絵を論じているからなんです。私は、もう字幕を追うのに疲れちゃって・・・

では、なぜそんなにも言葉をつくして語るのか?もちろん、その絵が大好きだからということでしょうが、それだけではないような?何なのだろうと考えていたら、この前読んだ「グランドツアー」という本に思い当ることが書いてありました。

目で見たものを言葉に置き換えるという、この文学的修辞法は、古くから「エクフラシス」と呼ばれてきたもので、おそらくアディソンもそれに依拠していると思われる。(「グランドツアー」76ページ)

この文は、イタリアを旅行していたジョゼフ・アディソンというイギリス人がマルモレの滝を形容する場面に出てきます。

“エクフラシス”を辞書で引いてみると、

[名](複 ekphrases,ecphrases〔-sìːz〕)エクフラシス、造形芸術描写:もともとギリシャ・ローマの叙事詩に取り入れられた技法.絵画や楯などの芸術作品を言葉で(文学的に)描写すること.

このように西洋では、絵や彫刻を鑑賞する際に、言葉でいかに文学的に表現できるかを訓練し、習慣としてきた歴史のようなもの、厚味をこの映画「ナショナル・ギャラリー」は感じさせます。

ドキュメンタリーなので、コラージュのような時間の流れではありますが、3つの企画展が印象的でした。そして、絵に携わる人々、ギャラリーの清掃員から額縁の金箔張り師まで、そこには至宝を支える人と言葉がいっぱいでした。

休憩なしの3時間、美と熱がぎっしり詰まった映画です。

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2015年2月 6日 (金)

1月の読書まとめ

読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1614ページ


氷点(下) (角川文庫)氷点(下) (角川文庫)感想
タイトルの「氷点」とはどんな意味だったのか、深く心に響きました。「一途に精一杯生きて来た陽子の心にも、氷点があったのだということ」、その一文は、深くて重い言葉でした。心が凍ってしまうという深い絶望が啓造でもなく、夏枝でもなく、陽子によって語られるこの一点を書くためにこの本が書かれたのではないか、ただただそう思って読了しました。考えさせられました。
読了日:1月4日 著者:三浦綾子
わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女感想
パキスタンが地政学的に重要な国であることはうすうす知っていたが・・・この本で、時系列に沿ってインド、パキスタン、アフガニスタンの歴史的背景が丁寧に説明されていた。マララさんの故郷、スワート地区もテロに巻き込まれ、誰を信じられない状況で、人々は混乱していようだ。その中で、マララ一家のいっぽん筋の通った生き方は、尋常なものではない。その意志の強さと生命力に脱帽。
読了日:1月7日 著者:マララ・ユスフザイ,クリスティーナ・ラム
掏摸(スリ) (河出文庫)掏摸(スリ) (河出文庫)感想
はじめて中村さんの本を読んでみました。ドストエフスキーを彷彿させると噂されていたので、期待感もありました。はい、その噂、当たってました。そして、この作品は、大いなる長編のプロローグに近い作品と感じました。どう展開していくか、「王国」が楽しみです。
読了日:1月14日 著者:中村文則
長女たち長女たち感想
3編の作品、どれもリアルに日常が迫って、考えさせられました。長女たちが感じる途方に暮れるほどの閉塞感――精神的なものだけでなく、経済的なものもあり、親は重いです。若者が明るい将来を描けないと言われる現代、子どもが自分の明るい老後を描けない現実がありました。リアル長女たちにおススメしたい気持ちと、重すぎる世界に正直おススメしたくない気持ちが拮抗します。
読了日:1月19日 著者:篠田節子
女のいない男たち女のいない男たち感想
“一人の女性を失うというのは、すべての女性を失うことでもある。そのようにして僕らは女のいない男たちになる(表題作「女のいない男たち」より)。”こういった喪失感ただよう村上春樹の短編集を読むと、懐かしい好みのワインをゆるりと味わっている気持ちになる。表紙の俯瞰する街角の風景は、今という現在から失われた過去を観ているようだ。「独立器官」は「グレート・ギャツビー」の香りがした。余談だがBGMのことをエレベーター音楽ということを知らなかった。「夏の日の恋」を聴いてみた。
読了日:1月24日 著者:村上春樹
ビロードのうさぎビロードのうさぎ感想
「あっ、『最果てアーケード』の装画を書いた人だ!」どこか懐かしい気持ちにさせる酒井駒子さんの絵は、本を心の近いところに寄り添わせてくれる。ビロードの肌触りが手によみがえり、誰にでも子どもの頃に特別だったぬいぐるみが生き返る。あのぬいぐるみたちも妖精にほんものにしてもらえたかしら?緑の目と赤いお鼻が愛くるしいビロードのうさぎさん、よかったね。
読了日:1月27日 著者:マージェリィ・W.ビアンコ

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